「どれくらいの規模で野菜を自給できるか」高齢で病持ちでも畑仕事をやって学んだ農業の知的で人間的な営みの魅力

2024年11月14日(木)16時18分
森永 卓郎 (経済アナリスト、獨協大学経済学部教授)*PRESIDENT Onlineからの転載

「ブルシット・ジョブ」より農業のほうが知的で人間的

しかしだからこそ、無事収穫に至ったときの喜びは何にも代えがたいほど大きいのだ。

じつは、私がいま耕作している畑は全体では1ヘクタールくらいあって、その一部を7~8人のメンバーで分担している。大部分が定年後のサラリーマンだ。


彼らに「なぜ農業をしているの」と聞くと、帰ってくる答えは「だって楽しいじゃないか」という。

いま大都市で広がっている仕事は、コンピュータの指令の下、マニュアルどおりに働く「ブルシット・ジョブ」だ。それらの仕事と農業のどちらがより知的で、どちらがより人間的かは、議論の余地がないのではないか。

農業には厳しい結果責任がともなう。いくら頑張っても自然に翻弄されてしまう。しかし、その自然と付き合う手段は、すべて自分で選択できる。

どのように土を作るか、なんのタネや苗を植えるか、支柱をどう立てるか、芽掻(めか)きをどうするのか、追肥(ついひ)をどうするのか、虫や動物対策をどうするかなど、自ら考え、実行することは無数にある。

つまり、農業こそ、「自由と自己責任」の仕事といえるのだ。

農業はコミュニティの場

そして、農業は、コミュニティの場でもある。

2023年11月にがんの宣告を受けたあと、度重なる検査や体調不良の結果、私はまったく畑に出られなくなってしまった。

雑草が生い茂り、地主の農家に顔向けができないと心配していたのだが、畑仲間が草を刈り、耕運機をかけてくれた。

そして、2024年の早春、私が農作業に出られない状態が続くなか、仲間が畑に畝(うね)を立て、冬越しの栽培が必要なスナップエンドウの苗を植えてくれた。

さらにゴールデンウィークのころには、トマトやキュウリ、スイカなどの苗も植えてくれたのだ。

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