最新記事
米住宅市場

アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎

US Housing Market Hit by Shrinkflation

2024年9月10日(火)17時01分
ジュリア・カルボナーロ
ジャージーシティーの家々(空撮)

都市には土地がなく、地方(とくに南部)には人が流入(ニュージャージー州ジャージーシティ)Photo by Jakub Porzycki/NurPhoto

<価格を上げる代わりに量を減らす──ポテトチップスでもお馴染みのステルス値上げが、アメリカの住宅市場を席巻している>

アメリカでは住宅にも、面積が縮小しているのに価格が上昇する「シュリンク・フレーション」が起きており、住宅購入を希望する人たちは大打撃を受けていることが最新調査で判明した。とりわけ深刻なのは南部だ。

■【動画】中国の不動産大手が約15兆円を投じてマレーシア南部の人工島の上に作った巨大な街、「想定外すぎる」現在の姿

米紙USAトゥデイ/ホームフロントが、不動産情報サイトRealtor.comのデータを分析したところ、全体のちょうど中央に位置する中央値(メディアン)的な住宅の現在の敷地面積が、5年前と比較して128平方フィート(およそ11平方メートル)縮小したにもかかわらず、価格は12万5000ドル(およそ1790万円)上昇していることが明らかになった。

シュリンク・フレーションとは、「シュリンク(縮む)」と「インフレーション」が合体した言葉で、企業が製品の小売価格は維持したまま、内容量を削減して目立たないようにコストを削減することを指す。身近な商品では、年々小さくなっていくチョコバーや、中身がすかすかになったポテトチップスの袋やシリアルの箱が思い当たる。

コスト増でもお手頃価格に

この考え方は、ほかのセクターにも当てはまる。そのひとつが住宅だ。USAトゥデイ/ホームフロントの調査によると、米国の中央値的住宅の面積は2019年以降で6%縮小した一方で、1平方フィート(0.1平方メートル)当たりの価格はなんと52%も上昇している。

この調査で分析対象となった主要な大都市圏150のうち、過去5年で面積が拡大したのはわずか18都市圏だ。面積の縮小幅が最大だったのは。コロラド州コロラド・スプリングスだ。同市の中央値的住宅の面積は、2019年比で22%縮小したが、1平方フィート(0.1平方メートル)当たりの価格は50%上昇した。

「米国の住宅市場において、価格が上昇しているにもかかわらず住宅面積が縮小している背景には、絡み合ったさまざまな経済的要因がある。特に関係しているのが、インフレで建設コストが高騰し、住宅がますます高くなっていることだ」。USAトゥデイ/ホームフロントの研究者デイナ・ドレイクは本誌にそう語った。

「インフレにより、建築資材はもちろん、人件費が大幅に上昇したため、住宅建設コストが高騰している」とドレイクは続ける。「それでもある程度のお手ごろ価格を維持して住宅を買ってもらうには、敷地面積を縮小せざるを得ない」

ドレイクによれば、敷地面積の縮小幅が大きい都市が米南部に集中しているのは、テキサス州やノースカロライナ州を中心に人口が急増しているためだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩める大統領令に近く署名か 米

ワールド

ウクライナ、東部要衝都市を9割掌握と発表 ロシアは

ビジネス

ウォラーFRB理事「中銀独立性を絶対に守る」、大統

ワールド

米財務省、「サハリン2」の原油販売許可延長 来年6
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中