最新記事
ビジネス

ECサイトの「カゴ落ち」率は68.8% 顧客に見放される企業と顧客を惹きつける企業の違い

2024年7月23日(火)06時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ECサイト

Chay_Tee-shutterstock

<デジタルを「うまく」活用すれば、顧客中心の対応ができる。顧客の経験を理解することがその第一歩だが、何をすればいいのか。ベストセラー『競争優位の終焉』著者リタ・マルグレイスの論考より>

理屈のうえでは、どんな企業もデジタル・テクノロジーで素晴らしい顧客体験をつくりだせるようになり、真の顧客中心組織になるという目標を達成できるはず。

だが大抵の場合、現状は理屈とは大きく異なっている。

たとえば、次の数字。

オンラインショップの「カゴ落ち」率 68.8%
(ベイマード研究所の2022年のデータより)

つまり、商品が欲しくなってカートにまで入れた100人の顧客のうち、70人近くは購入手続きを終わらせないまま、ウェブサイトを離れてしまうのだ。

なぜ、このようなことが起こるのか。この数字をどう捉え、どう対応すればいいのか。

ベストセラー『競争優位の終焉』(日経BP)の著者で、コロンビア大学経営大学院の経営学教授リタ・マルグレイスは、顧客が求める体験を実現するには顧客中心のサービスを目指したデジタル・テクノロジーの活用が欠かせないという。

そこで、このたび発売された『Duke CEマネジメントレビュー』(かんき出版)に掲載されているマルグレイス氏の論考から、一部を抜粋して紹介する。
『Duke CEマネジメントレビュー』
同書の著者はアメリカの名門デューク大学フクア経営大学院の関連組織で、あらゆるレベルのリーダーを育成するためのリーダーシッププログラムを企業に提供している世界有数の教育機関であるDuke コーポレート・エデュケーション。

同書はDuke コーポレート・エデュケーションの執筆陣が寄稿している機関誌「Dialogue」から、特に重要な20本の記事を厳選してまとめたものである。

※同書より抜粋した記事2本目:組み立てが大変なイケアの家具は満足度が高く、時短になる簡単ケーキミックスは売れなかった理由

(以下より抜粋)

◇ ◇ ◇

(先のオンラインショップの「カゴ落ち」率が68・6%にのぼるという事態について)オンラインショップ運営者の立場になって考えてみよう。

あなたは、ウェブサイトの見た目や使いやすさがよくなるようお金をかけた。

買ってくれそうな顧客がウェブサイトを訪れるよう、マーケティング活動に力を入れた。買い物をする顧客が満足しそうな品ぞろえを実現した。

顧客がスムーズに購入手続きを進められるよう、決済サービスプロバイダーを導入した。ウェブサイトの安全性を高めるために、システムの保護に投資した。顧客の質問に答えられるよう、オンラインチャットの対応要員を待機させた。

どうやらすべてうまくいっているようだ。あなたのオンラインショップを訪れた人々はショッピング・カートにどんどん商品を入れていて、購入手続きまであとわずかなところまで来ている。

すると、そこで「何か」が起きる。

あなたが想像すらしていなかったかもしれないその「何か」が原因で、顧客は「あ、やっぱりもういいや」と思ってしまう。

それはもしかしたら、顧客は目当てのものをさっと買いたかっただけなのに、アカウント登録を求められたからなのかもしれない。

画面に示された決済方法の選び方が、わかりづらかったからかもしれない。

最後のほうで示された送料が、予想以上に高額だったからかもしれない。

購入したい商品の配送が、使いたい日に間に合わないからかもしれない。

購入手続きの進め方がわからずに、あきらめてしまったからかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、対ロ制裁法案に署名へ 最終権限保持なら

ビジネス

エアバス、A350の大型派生機を現在も検討=民間機

ビジネス

ヤム・チャイナ、KFC・ピザハット積極出店・収益性

ビジネス

午前のドル155円前半、一時9カ月半ぶり高値 円安
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中