最新記事
経営

組織を滅ぼす「過剰な顧客第一主義」、適切ラインを見極めるため知っておきたい4つのポイント

2023年12月20日(水)18時30分
廣瀬信行 ※経営ノウハウの泉より転載
顧客第一主義

Gustavo Frazao-shutterstock

<クライアントファーストを掲げる会社は多いが、過剰なサービスは諸刃の剣。効率的に実行するための4つのガイドラインとは?>

顧客満足度向上のために「クライアントファースト」を掲げる企業は少なくありません。筆者が以前在籍していたコンサルティングファームもクライアントファーストを重視していました。

ビジネスが客商売である以上、顧客を大切にするのは当然のことです。

しかし、行き過ぎたクライアントファーストは組織にとって大きなリスクとなる諸刃の剣です。

本記事では、過剰なサービスが組織崩壊につながるケースと、クライアントファーストを効率的に運営するための指針について紹介します。

クライアントファーストとは

クライアントファーストとは顧客満足度を最優先に考え、顧客のニーズや期待に応える経営方針のことを指します。社内共通の価値観とすることで企業の競争力を強化することが目的であり、顧客満足度の向上やロイヤリティの強化、長期的な関係構築などに有効です。

しかし、クライアントファーストがその他に維持されるべきバランスを超えてまで絶対視されるようになると、組織にさまざまな問題を引き起こす可能性があります。

行き過ぎたクライアントファーストは危険?その理由とは

では、過剰なクライアントファースト絶対主義がもたらすリスクとは何でしょうか。

■リスク1:リソースの浪費

最初に懸念されるのは、リソースの浪費です。

顧客のすべての要求に対応しようとすると、報酬に見合わない量のリソースがサービスや商品提供に消耗されてしまうことがあります。

さらに、顧客対応の場面だけの問題ではなく、全社的なリソースの消費効率を損なうレベルにまで達すると、組織の継続的成長や革新の機会が失われる危険性もあるのです。範囲外の要求は消費されるリソースとのバランスを考慮し、対応を検討しなければなりません。

■リスク2: 不公平な顧客対応

また、一部の顧客の要望に過度に応えると、他の顧客の利益が損なわれる場合もあります。想定よりも特定の顧客に過剰なリソースを消費してしまうことで、他の顧客対応が十分にできなくなってしまいます。その結果、全体的に顧客満足度が下がってしまい、顧客離れを招いてしまうかもしれません。

■リスク3: 社員のストレス増加

副次的ではありますが、行き過ぎたクライアントファーストは社員の過剰なストレスの原因になってしまう恐れもあります。過剰な要求に対応するのは主に現場の社員です。通常のサービスでは想定されていない要求に対応することになるため、強いプレッシャーやストレスを感じてしまう場面も考えられます。

クライアントファーストが絶対視された価値観の組織では、要求に応えることが当然であるため、担当者が「お客様は常に正しい」「お客様の機嫌を損ねてはいけない」という強いプレッシャーにさいなまれ、心身に影響が出てしまうケースが起こりうるでしょう。

このような状態が社内で発生すると、社内全体で社員の燃え尽きや職場のモラル低下、さらには高い離職率を引き起こす可能性が出てきてしまいます。

(参考記事)「赤字が止まらない...」いつ会社をたたむべき?撤退タイミングを弁護士が解説

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、EUにメタン排出法の適用除外を要求=政府文書

ビジネス

ウォン安と不動産価格上昇、過剰流動性だけが背景では

ビジネス

12月の豪消費者信頼感指数、悲観論が再び優勢 物価

ビジネス

ベトナムEVビンファスト、対インドネシア投資拡大へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中