最新記事
自己啓発

不当な解雇通知はカネになる 2社から4700万円勝ち取った会社員、円満退社を可能にした「バックペイ」とは?

2023年7月18日(火)18時00分
佐藤大輝(ブラック企業元社員) *PRESIDENT Onlineからの転載

基本的に「会社と戦う」選択肢は獣道である

労働問題の慰謝料は50万~100万円も取れたら御の字の世界。弁護士費用を払ったら赤字になることは十分に考えられるし、投資あるいは消費する労力や時間は膨大。コスパやタイパを考えると「泣き寝入り」という道が合理的であるケースも多いのではないか。それでもどうしてもやり返したいという方は、例えば慰謝料+未払い残業代請求など、「合わせ技」で請求するのが好手だろう。

 
 
 
 

基本的に「会社と戦う」という選択肢は獣道だ。いざという時の保険くらいに考えるのが正解だと私は考えている。正直に言えば、誰も進んでいない道を進むのは、けっこうつらい。家族や友人からは「会社相手に勝てるの?」「裁判なんてやめて、気持ちを切り替えて、次のステージへ進んだほうがいいって」といったアドバイスが飛んでくる。

これらは純粋な親切心から来るので、拒絶するのは胸が痛むし、なんだか自分が悪いことをしているように錯覚する。まして戦う相手はかつての仲間だ。傷つけられるのもキツイが、傷つける側に回るのもそれなりにキツイ。裁判しているという事実がマイナスに影響するせいか、周りからは刃のような冷たい眼差しと評価を受ける。結果、「自分がやっていることは本当に正しいのか?」といった疑問が常につきまとうことになる。

「解雇」と「円満退社」では雲泥の差がある

だが、不当解雇を訴えることは、本来もらうはずだった給与(あるいは私のように賠償金)を取り戻せるばかりではない。私の和解調書には「解雇を取り下げ、円満に退社した」という旨の記載がある。よって私は転職活動をする際、「前職は円満に退社しました‼」と笑顔で面接官に伝えることができるのだ。「解雇」と「円満退社」ではキャリアに雲泥の差がある。

人手不足が叫ばれるわが国において、前職を円満退社した人材を採用選考で「お祈り」しない企業は少なくないだろう。もしかしたら私のような訴訟経験者だって、何食わぬ顔で働いているかもしれない。アナタの隣で......。

労使間のトラブルは労働者だけでなく、会社にも深い傷を残しかねない。近い将来、日本社会で「ブラック労働者」という社会問題がなくなることを私は心から願っている。

佐藤大輝

ブラック企業元社員
23歳の時、不当解雇されたブラック企業を訴え、20カ月間争った後、和解金700万円を獲得。29歳の時、不当解雇されたグレー企業を訴え、24カ月間争った後、和解金4000万円を獲得。神戸市在住の現在32歳。趣味は読書、バドミントン、海外渡航。これまでにバッグ一つで世界25カ国を旅した。ビジネス書と小説、どちらもベストセラー書籍を出版するのが夢。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中