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人生に本は100冊あればいい──紙の本こそが「速読に適したメディア」である理由とは?

2023年3月1日(水)09時53分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
書物

wragg-iStock

<名文家で知られる、朝日新聞編集委員の近藤康太郎氏。文章を35年間書き続けてきた裏には、読書がある。本を「人生の友」にしてきた技術とは?>

文章術の実用書でありながら、ノウハウだけではない。生き方まで問われる、まるで思想書──口コミ、文章講座や勉強会で噂が広まり、売れ続けている文章読本がある。朝日新聞の名物・名文記者として知られる近藤康太郎氏が書いた『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』だ。

その文章術には、日本文学や海外文学の古典、自然科学、社会科学、そして詩歌にいたるまで、広く、かつ深く読むことで培われた教養で盤石な土台が築かれている。

しかし、どのようにして読書に時間をあて、書物を血肉にすればいいのだろうか。近藤氏の新刊『百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術』(CCCメディアハウス)より「第1章 終わりなき論争:速読の技術/遅読の作法」を抜粋する。

◇ ◇ ◇

【A面】速読の技術──本を精査するためのスキニング

速読術をうたう本は、ビジネス実用書の一ジャンルとして確立され、いつでも書棚を占めている。速読は、現代人に必須の技術だという。一方で、遅読(スロー・リーディング)の大切さを説く本もある。「速読で身につけた知識は脂肪だ」と言い切る。

速読か、遅読かの二者択一ではない。速読する本と、じっくり精読するべき本を分ける。これが、わたしの考えだ。

情報を猛スピードで、大量に処理しなければ、いまの世の中についていけないと、よく言われる。わたし自身は、これを強迫観念だと考えている。むしろ、いまの時代はどうやって情報を遮断するかのほうが重要だ。ネットを切断して、じっくり世界を観察する。考える。あるいは、文章を書く。

そうした「静の時間」をいかに創り出すかにこそ工夫がいる。だから、速読するのは、静かに精読するためだ。精読する本を選び出すため、猛スピードでスキニングしていく。精読のための速読だと考えている。


百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術
 近藤康太郎[著]
 CCCメディアハウス[刊]

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