最新記事

日本企業

マツダ、サプライチェーンにおける中国依存低減へ 取引先に要請

2022年8月12日(金)17時00分
マツダのロゴ

マツダは取引先の部品メーカーに対し、中国製部品に関して同国以外での並行生産や在庫積み増し、日本での在庫保有を要請していることを明らかにした。写真は同社のロゴ。2019年3月、ジュネーブで撮影(2022年 ロイター/Pierre Albouy)

マツダは12日、取引先の部品メーカーに対し、中国製部品に関して同国以外での並行生産や在庫積み増し、日本での在庫保有を要請していることを明らかにした。地政学リスクも高まっており、事業継続性の観点から部品調達で中国への依存度を低減する。役員が同日の取材会で語った。

自動車各社は半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による中国・上海ロックダウン(都市封鎖)の影響で部品供給が滞り、減産を強いられた。特にマツダは都市封鎖の影響が大きく、2022年4─6月期は195億円の営業赤字に陥った。

毛籠勝弘専務執行役員は、日中関係について「経済的には安定してほしいが、昨今の地政学リスクの影響は常に考えておかなければならない」と指摘。中国に限らず、東南アジア各国でも都市封鎖はこれまで起きており、「今までのように労働集約的なコストの低い地域に(生産を)依存するというやり方から脱却して、コスト競争力をつけようという取り組みを進める」と述べた。

マツダは、部品調達時の購入コストだけでなく「全てのサプライチェーン(部品供給網)を見通した最適な原価の作り込み」(毛籠氏)を進めており、その中で自社の国内工場に近い場所に部品を置いておく調達構造に変更する方針だ。

マツダによると、中国からの調達部品は約800点、同部品に関連する取引先は約200社に上る。向井武司専務執行役員によると、上海の都市封鎖では、日系・欧米系の一次取引先でも中国を経由する部品があったほか、日系の取引先で日本で生産する部品や二次・三次取引先の部品でも、その構成部品に中国製が含まれていた。マツダは一時期、中国経由の部品調達を推進してきた経緯もあり、中国を経由する部品の割合が他社に比べ多かったという。

このため、新たな車種を設計する際、取引先との契約時には中国以外、複数拠点での並行生産や在庫保有、日本での在庫保有などを「今よりも大幅に増やしていけるような契約を結んでいきたい」(向井氏)という。拠点間の物流回数も減らすため、「調達構造のフラット化、シンプル化」(同)も推進する。

安い労働力で値段を下げてきた部品の生産を国内回帰させる場合、向井氏は自動化などでコスト競争力は維持できるとみており、「技術を確立できれば、国内でも(強いコスト競争力を)実現できるのでは」と語った。ただし、日本でも豪雨などの自然災害リスクはある。向井氏は、部品在庫を「どこに置いてもリスクはある」とし、その時々の世界の情勢や政策などを考慮しながら、「最もリスクの高い所から別の所に移していくことを小まめにやるしか、もう方法はない」とも話した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界インフレ動向はまちまち、関税の影響にばらつき=

ビジネス

FRB、入手可能な情報に基づき政策を判断=シカゴ連

ビジネス

米国株式市場=主要3指数最高値、ハイテク株が高い 

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、政府閉鎖の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中