最新記事

事故

スエズ運河、コンテナ船座礁の原因と復旧作業の見通しまとめ

2021年3月26日(金)17時57分

エジプト北東部のスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁し、往来を遮断している。写真は座礁したコンテナ船「エバーギブン」。提供写真(2021年 ロイター/Suez Canal Authority)

エジプト北東部のスエズ運河で巨大コンテナ船が座礁し、往来を遮断している。スエズ運河は世界で最も交通の激しい運河のひとつで、欧州とアジアを最短距離で結ぶ航路だ。

◎座礁の経緯

全長400メートルのコンテナ船「エバーギブン」は23日午前に座礁した。紅海から地中海へと北上する途上で方向がねじれ、運河の両岸の間を斜めにふさぐ形で動けなくなった。

スエズ運河庁によると、強風と砂嵐により視界不良となったこと、あおられてまっすぐな針路を保てなくなったことが主因とみられる。座礁当時、エジプトは強風に見舞われており、地中海と紅海で複数の港が閉鎖に追い込まれていた。

船舶はスエズ運河に入ると、通常は船団を組んで進む。航行は1、2隻のタグボートに補助される形になる。時に座礁が起こるが、通常はすぐに離礁し、他の船舶の運航にはほとんど影響を及ぼさない。

◎往来が遮断された理由

エバーギブンは、水路が1本しかない運河最南端部分をふさいだ。このため、他の船舶は一切通行できない。

エジプトは2015年、35キロメートル区間で第2水路を開通し、双方向の同時通行ができるようにした。ただこの対象区域は、グレートビター湖以北の、湖にかけて河幅が広がる区間。

運河庁は24日、エバーギブンがすぐに離礁すると見込んで運河北端のポート・サイドから船団が運河に入るのを許した。しかし、こうした船舶はグレートビター湖の待機水域で足止めとなり、いかりを下ろしている。

◎離礁のための作業

少なくともタグボート8隻が船を岸から引き離すためのけん引などを試みてきた。エバーギブンのウインチ(巻き揚げ機)も動かしている。このほか掘削機が、運河東岸にめりこんでいる船首付近の土の除去を行っている。運河庁は海底の土砂を浚渫(しゅんせつ)する船を2隻差し向けた。

船を浮かせようと、複数の地元海事当局筋によれば、船体を安定させる目的で積まれている「バラスト水」を抜く作業も行われた。

◎その他の選択肢

エバーギブンの船主会社は日本サルヴェージ社とオランダのシュミット・サルベージ社から2つの専門チームを呼んでいる。船体を浮かせるための「より有効な計画の立案」を仰ぐためだ。

シュミット・サルベージの親会社Boskalisの広報担当者は、タグボートに加えて複数の船舶を使う可能性があるが、コンテナ船にダメージを与えずにどれほどの力をかけられるかについては計算が必要だと述べた。

この他の選択肢としては、船底の下の海底から砂をすくい出すことや、貨物を降ろして重量を軽くすることが考えられる。ただ複数の海運筋は、コンテナ船の規模と位置を考えると、貨物を降ろすのは長期的かつ複雑な作業になる可能性があると話している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日会談 ワシントンで

ビジネス

FRB利下げ再開は7月、堅調な雇用統計受け市場予測

ワールド

ガザ封鎖2カ月、食料ほぼ払底 国連「水を巡る殺し合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中