最新記事

貿易

中国、輸入食品に「コロナ検査」 輸出国側、科学的根拠なしと大反発

2020年11月19日(木)19時15分

北京のスーパーで17日撮影(2020年 ロイター/Tingshu Wang)

世界の主要食料輸出国は、中国が新型コロナウイルスの検査を名目に導入した輸入食品の監視制度へ不満を強め、こうした仕組みを中止するよう求めている。一部からは、不当な貿易制限に等しいとの声も聞かれる。

中国は、ドイツからの豚肉やブラジルからの牛肉、インドからの魚介など20カ国の包装加工品で新型コロナウイルスが検出されたと主張している。ただ、各国は中国側が証拠を開示しておらず、貿易活動に支障をきたすだけでなく、自分たちの食品の評判が理由なくおとしめられていると非難する。

ジュネーブ駐在のある通商関係者によると、今月5─6日に開催された世界貿易機関(WTO)の会合では、カナダがこうした意見を表明した。中国側が核酸検出検査で陽性となったとする輸入食品の受け入れを拒否していることについて、カナダは「妥当性のない貿易制限」とし、やめるよう要請したという。

この関係者によると、カナダは中国が検査措置を正当化する科学的根拠を示していないと主張。オーストラリア、ブラジル、メキシコ、英国、米国が同調した。

米政府も今月、中国に対して二国間ルートならびにWTOを通じて、輸入製品の監視で実際のリスクを適切に評価する態勢を確保するよう要望したと発表。米農務省は「中国の直近の輸入食品に関する新型コロナウイルス(を理由とする)制限措置は科学に基づいておらず、貿易に混乱をもたらす恐れがある」と指摘した。

ところが、その後も中国は輸入食品の監視を強化する一方だ。今週には共産党機関紙・人民日報の系列の環球時報が、輸入食品から新型コロナウイルスが見つかったことで、同ウイルスの起源は海外からだった可能性が高まったとの見解を示した。

中国が冷蔵・冷凍輸入食品の新型コロナウイルス検査を開始したのは今年6月。その前に北京の卸売市場で輸入食品を扱う仕事をしていた人の間で、集団感染が発生していた。

世界保健機関(WHO)の見解では、食品や包装部分がウイルスの感染経路だとは判明していない。しかし、中国は国内での感染をせっかくほぼ撲滅したのに、食品を通じて再びウイルスが入ってくるリスクがあると言い張っている。

くすぶる不信感

中国の通関当局や公衆衛生当局が輸入品の監視を厳格化していることについて、貿易相手国は国際基準に則っていないと、何カ月も胸の内に不満を募らせていた。これが今回、とうとう表に出てきた形だ。

北京駐在のある外交官は「中国の公衆衛生当局が検査を実施した時は、そして何か発見した時は、その都度、必ず結果を関係者間で共有すべきだ」と指摘。「われわれは一度たりとも、科学分析内容を受け取っていない。誰もがそれは真実なのか、彼らは本当に何かを見つけたのか、と疑問を投げ掛けており、一切の証拠が提示されないことに驚いている」と憤る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中