最新記事

米中関係

米、世界のサプライチェーンから中国排除へ取り組み加速=当局者

2020年5月5日(火)11時00分

トランプ米政権が新型コロナウイルス感染拡大に対する中国の対応を巡り新たな対中関税措置を検討すると同時に、世界の産業供給網から中国を排除する取り組みを加速化させていることが当局者の話で明らかになった。上海で昨年月7撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

トランプ米政権が新型コロナウイルス感染拡大に対する中国の対応を巡り新たな対中関税措置を検討すると同時に、世界の産業供給網から中国を排除する取り組みを加速させていることが、当局者の話で明らかになった。

国務省のキース・クラッチ次官(経済成長・エネルギー・環境担当)はロイターに対し、「米国は数年前から供給網の中国に対する依存度の引き下げに取り組んできたが、現在こうした動きを加速させている」と指摘。「どの分野が重要で、深刻なボトルネックがどこに存在しているのか洗い出す必要がある」とし、米国の国家安全保障に関わる問題で、政府は近く何らかの措置を打ち出す可能性があると述べた。

現職の当局者や元当局者によると、商務省および他の政府機関は、調達と製造の双方を中国から他の地域に移すよう企業に働き掛ける方法を模索。税制優遇措置や国内回帰に向けた政府補助などが検討されているという。

当局者の一人は「政府全体で取り組みが進められている」とし、製造業のどの分野を「必須」と見なし、中国外でどのように製造していくか、各省庁で検証が進められていると述べた。

トランプ大統領の対中政策は、政権内の対中強硬派とビジネス推進派の舞台裏での攻防が特徴の一つとして挙げられるが、現在の状況下では、対中強硬派が勢力を増していると主張。当局者は「中国との取引に関連して存在していた懸念が全てコロナ禍で具現化した形になっており、破滅的な事態に向かう地合いは整っている」と語った。

当局者によると、中国に対する措置としては関税以外に、同国の当局者や企業への制裁や、台湾との関係強化という選択肢もある。

別の当局者によると、米政府は「エコノミック・プロスペリティー・ネットワーク」と称される「信頼の置けるパートナー」との連携を構築中。デジタル事業、エネルギーとインフラ、研究、貿易、教育、通商など広範な分野で共有できる基準を採用して運営されている企業と市民社会団体が参画するとしている。

これに関連してポンペオ国務長官は4月29日、米政府は日本のほか、オーストラリア、ニュージーランド、インド、韓国、ベトナムと共に、「世界経済の前進に向け」取り組んでいると表明。「今回のような事態の再発を防ぐための供給網の再構築」などが協議されていることを明らかにした。

中南米諸国も役割を果たす可能性がある。コロンビアのフランシスコ・サントス駐米大使は4月、米ホワイトハウスのほか、米国家安全保障会議(NSC)、米財務省、米国商工会議所と、米企業が供給網を中国から米国に近い地域に移すよう働き掛けることについて協議していると明らかにした。

米中ビジネス協議会(USCBC)のダグ・バリー報道官は「コロナ禍で明るみに出たリスクの度合いを踏まえると、供給網の多様化は理にかなう」と指摘。ただ「中国で稼働する企業がこぞって国外に移管する動きはまだ見られていない」と述べた。

国連の統計によると、中国は2010年に米国を抜いて世界最大の製造業国として台頭した。

米商務省は4日、国家安全保障の観点から、電力用変圧器の主要部品に輸入関税を課す可能性ついて調査を開始したと発表した。

ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は、トランプ大統領が国内送電網で使用する部品について、中国とロシアからの輸入を制限することを認める大統領令にすでに署名したと明らかにした。また、連邦政府機関に米国製医療用品の調達を義務付ける別の大統領令が近く発布されると述べた。

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・東京都、新型コロナウイルス新規感染87人確認 都内合計4655人に(インフォグラフィック)
・韓国のコロナ対策を称える日本に欠ける視点
・トランプ「米国の新型コロナウイルス死者最大10万人、ワクチンは年内にできる」


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ラガルドECB総裁、職務に専念と同僚らに伝達 FT

ビジネス

スイス中銀、銀行の流動性支援強化で詳細発表

ワールド

韓国の尹錫悦前大統領に無期懲役、内乱首謀で地裁判決

ビジネス

フィリピン中銀、6会合連続利下げ 先行き不透明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中