最新記事

便乗商法

新型コロナウイルス、パンデミックの陰で暗躍「マスクブローカー」 粗悪品の温床にも

2020年4月5日(日)10時04分

新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの流通が混乱、一攫千金を狙うブローカーが続々と誕生している。写真は合成。マスクをつけた米ドルと英ポンド紙幣。3月31日、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボで撮影(2020年 ロイタ/Dado Ruvic)

ブライアン・コルフェージ氏(38)。フロリダ在住の退役軍人で、独自に対メキシコ国境に「壁」を築くと称して、米国民から数百万ドルの寄付を集めた人物だ。

そのコルフェージ氏が、新しい事業に乗り出している。新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)により危機的な品不足に陥っている防護マスクを何百万枚も売りさばこうというのだ。

1カ月ほど前、コルフェージ氏はアメリカ・ファースト・メディカルという名の企業を設立し、高性能マスク「N95」の大量販売を仲介するとウェブサイトやソーシャルメディア上で宣伝している。提示価格は1枚あたり約4ドル。パンデミック前の数倍だが、一部の病院、介護施設、救急隊員が最近払っている価格に比べれば、それでも数ドル安い。

まだ買い手は見つかっていないが、コルフェージ氏によれば、日本や東欧諸国の倉庫で眠っていた在庫など、世界中でマスクを発見しているという。契約がまとまれば、発注規模に応じて1─3%の手数料を徴収するつもりだと同氏は言う。

コルフェージ氏は、自分がやっているのは公共サービスだと称している。「人が嫌がることをわざわざ試み、こういう病院などができない仕事をすべてこなしている」とロイターに語った。「我々がやっているのは橋渡しだ。病院が金を払う気になるか、それは彼ら次第だ」

病院や介護施設に売り込み

コルフェージ氏がめざしているのは、「マスクブローカー」という新たな職種だ。新型コロナウイルスが世界中に広がるなかで、急造の混乱した市場が突然生まれた。ブローカーたちは数千万枚、場合によっては数億枚のマスクを入手できると主張している。通常ルート以外の供給網に頼る場合が多く、価格も1枚1ドル前後というかつての小売価格に比べ大幅に高い。

大量の取引が成立すれば、手数料が低率だったとしても、ブローカーにとっては大きな稼ぎになりうる。供給不足になかなか対応しないメーカーや商社に対して、必要に応じてマスクを売るよう促せるとすれば、こうしたブローカーたちは危機的なマスク不足の緩和に貢献するかもしれない。

だが、医療関連製品の供給企業や医療産業の関係者によれば、こうした狂乱ブームは同時に、標準的な品質管理を損ない、製造元や効果の怪しい大量のマスクが出回る市場を生み出しているという。供給がかつてなく減少するなかで、そうしたマスクを供給するという申し出が病院や介護施設に殺到している。詐欺に引っかからないことを祈りつつ、有望な調達先を模索するしか選択肢がない、という声もある。

売れ筋のマスクはN95だ。サージカルマスクより作りがしっかりとしており、コロナウイルスなどはるかに小さい粒子まで遮断することができる。

医療専門家によれば、品質が良くフィット性の低いマスクは空気中を漂う病原体を通過させてしまう可能性が高く、医療従事者が新型コロナウィルスに曝されてしまうという。新型コロナウィルスの感染者はすでに世界全体で80万人近くに達し、3万9000人近くが死亡している。

ロイターは新興のマスクブローカー5社にインタビューを行った。3社は米国、2社は世界最大のマスク生産国としてグローバル生産量の約半分を占める中国である。

こうしたブローカーたちは、動きの激しい市場において、ライバルが参入してくる前に、売り手と買い手をすばやく結びつけ、手持ちの在庫を売りさばくことをめざしているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、党大会で軍備目標再設定へ 前回目標は一部の

ワールド

米イスラエル、イラン産原油輸出への圧力強化で合意 

ワールド

訂正-焦点:高値の提案も拒否可能、経産省が買収指針

ビジネス

米当局、加工原料の安全性審査制度を検討へ 厚生長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中