最新記事

景気

日本経済大幅に悪化 日銀短観が示した中国依存浮き彫りに

2020年4月1日(水)16時35分

中国依存の経済構造、見直し難しく

明るい材料がないわけではない。感染拡大は今や欧米が中心であり、中国はすでにピークを越え、生産体制も緩やかながら回復に向かっている。

実は「日本経済にとっては欧米での需要蒸発よりも、中国での需要・供給体制のインパクトの方が大きい」と野村証券の三輪氏は指摘する。短観DIを見ても、中国からの部品調達の停滞で打撃を受けてきた電機は中国での生産回復を反映して先行きへの見方が改善している。

裏を返せば、中国経済の回復が進むことで、日本企業のサプライチェーンに中国がなくてはならない存在であり続けることになる。政府は新型コロナウイルス発生で明らかになった中国への依存が日本の経済安全保障にとって問題になるとの視点から、その見直しに動き始めている。

3月5日の未来投資会議では日本経済がいかに中国依存度が高いかを議論。中間財の輸出入依存度が2割を超えており、主要国と比べても群を抜いていることを課題に挙げている。

また本日発足した国家安全保障局の経済班では、新型コロナウィルスの影響による中国依存のサプライチェーンへの対応も扱うことになった。

一方で企業サイドではこうした意識はまだ薄く、中国から他地域への事業移管はそう簡単には進みそうにない。ロイター3月調査ではサプライチェーンへの影響を受けた企業のうち、その見直しを実施・検討している企業は47%と半数程度にとどまる。

そうした企業でも「調達国を中国から日本、台湾、東南アジアに変更しても構成部品が中国からの調達品であることも多く、思うように代替品を調達できない」(機械)など、なかなか代替先が見つけられない状況だ。

また輸出先としても中国を凌ぐ巨大市場はなく、現地への進出は欠かせない。自動車産業では販売台数の2割弱を、電子部品の3割強を中国向けが占める。国内市場の縮小をカバーするためにも必要不可欠な市場であり、代替となる他国市場の確保は困難な状況だ。

(編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・BCGワクチンの効果を検証する動きが広がる 新型コロナウイルス拡大防止に
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(4月1日現在)
・東京都、都立学校の休校をGWまで延長へ 新型コロナウイルス感染拡大で


cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪もパレスチナ国家承認へ、9月国連総会で イスラエ

ワールド

NZもパレスチナ国家承認を検討中、9月に正式決定へ

ワールド

ロシア、中短距離ミサイル配備制限中も開発継続=外務

ワールド

トランプ氏「首都からホームレス一掃」、州兵派遣の可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中