最新記事

日本経済

日銀、金融政策決定会合でマイナス金利深掘り見送り 4月は国債購入増が選択肢か

2020年3月16日(月)23時50分

日銀は16日、金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入増などを柱とする追加緩和を決定する一方、マイナス金利の深掘りを見送った。写真は黒田総裁。1月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

日銀は16日、金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)の購入増などを柱とする追加緩和を決定する一方、マイナス金利の深掘りを見送った。新型コロナウイルスの感染拡大で実体経済の先行きが見通せない中、マイナス金利の深掘り見送りは早くから「既定路線」となっていたもようだ。日銀内で政策対応の「本丸」とみなす声が多い4月の次回会合でどのような追加緩和の議論が行われるかが次の焦点となる。政府の経済対策が4月にも策定される中、国債買い入れの増額が緩和カードに浮上する可能性もありそうだ。

声明文ににじむ「苦心」

新型コロナウイルスの世界的流行を受けた市場の動揺が収まらない中で、前倒しで開かれた日銀の金融政策決定会合。東京株式市場の取引時間中に発表された声明文には、日銀の「苦心」がにじんだ。

黒田総裁は会見で、ETFの購入倍増などによる市場の安定確保、企業金融の支援策、流動性供給の充実の「3本柱」が、現時点で「日本経済に最も重要で効果的と判断した」と説明した。しかし、ETFや不動産投信(J-REIT)の購入目標は「倍増」でも期限付き、米ドル資金供給の拡充は16日朝に発表したものだった。

一方、マイナス金利は据え置かれ、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、政策金利を現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移するとする政策金利のフォワードガイダンスも維持された。

マイナス金利の深掘り見送りは「既定路線」

市場が神経質な動きを見せる中でも、日銀内ではマイナス金利の深掘りは見送るべきと見方が目立っていた。

新型ウイルスの拡大がどの程度、実体経済に影響するのか「現時点では定量的な判断が難しい」(幹部)状況。マイナス金利深掘りよりも、現時点で浮上している市場の安定確保や中小企業の資金繰り支援といった課題に先に対応すべきとする考えからだ。

米連邦準備理事会(FRB)の緊急利下げや欧州中央銀行(ECB)の量的緩和の拡大でも市場の動揺が収まらなかったことで、日銀内ではマイナス金利深掘りを急ぐ必要はないとの声も聞かれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中