最新記事

米中貿易戦争

米中通商合意「第1弾」ずれ込みはトランプの選挙戦略? 「第2段階」合意は遠く

2019年11月26日(火)10時47分

米中両政府の当局者や議員、通商専門家などによると、両国による「第1段階」の合意とりまとめが難航しているなか、「第2段階」の合意が実現する可能性が低下している。写真はG20首脳会合で顔を合わせたトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(右)。6月29日、大阪市で撮影(2019年 ロイタ/Kevin Lamarque)

米中両政府の当局者や議員、通商専門家などによると、両国による「第1段階」の合意とりまとめが難航しているなか、「第2段階」の合意が実現する可能性が低下している。

トランプ米大統領は10月の中国の劉鶴副首相との記者会見で、第1段階の合意に署名後、第2段階の交渉を即座に開始するとの見通しを示していた。中国による技術移転の強要や知的財産権の侵害に焦点を当てるとしていた。

ただ、2020年11月の米大統領選や第1段階合意に向けた交渉の難航といった要因のほか、他国と協力して中国に圧力をかけることに消極的な米政権の姿勢を背景に、第1段階よりさらに踏み込んだ合意が、近い将来に結ばれるとの期待が薄れていると関係筋は語った。

ロイターは20日、第1段階合意への署名が来年にずれ込む可能性があると報じた。中国が要求している広範な関税の段階的撤廃を巡る対立が、解消していないためだという。

中国政府の当局者らは、トランプ氏が再選を果たすか見極めたいなどの理由から、米大統領選前に第2段階合意について協議するとは見込んでいないと述べている。

中国政府のある当局者は「合意に署名したいのはトランプ氏で、中国側ではない。われわれは待てる」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

このような中国側の姿勢については、米下院の農業関連委員会の委員である民主党のジム・コスタ議員が20日に議会で、「プラグマティックな」中国筋から同様の説明を受けたと明らかにしている。

トランプ政権の高官によると、トランプ氏にとって現在の最優先事項は、注目度が高い第1段階合意を発表して中国による米農産品の大型購入を確定し、それを来年の大統領選に向けて1期目の重要成果だと強調することだという。

その後は、トランプ氏が国内問題に関心を向け、対中政策の優先度が低下する可能性があると高官は語った。

農産品以外の主要な争点については政権高官に協議を任せるとみられ、高官らは今後も引き続き、中国による米企業の知的財産権の侵害や南シナ海の軍事拠点化、人権の扱いといった問題で中国に対応を迫る可能性が高いという。

別の米政府高官は「第1段階が完結し次第、第2段階の交渉を開始する」と述べた。「第2段階合意がまとまるタイミングについては推測できない」とした。

米政府の元高官で米戦略国際問題研究所(CSIS)の通商専門家であるマシュー・グッドマン氏は、米中ともに市場を落ち着かせ、国内政策を巡る懸念を和らげるために早期に第1段階合意を締結することに明らかに関心があると指摘。ただ、より広範な合意が米大統領選前にまとまるという確信は持てないとした。

同氏は前週の議会への説明で、中国側は今春時点では可能だったかもしれない構造改革への意欲が後退しており、「改革を実行する見通しはない」と語った。

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

5月停戦案と直接協議、ウクライナの返答待っていると

ビジネス

貿易戦争、ユーロ圏の成長とインフレ抑制も=ECBチ

ワールド

韓国最高裁、李在明氏に5月1日に判決 公選法違反の

ワールド

パキスタン、インドの水資源協定停止に法的措置を準備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中