最新記事

自動車

脱メーカー狙うトヨタ あらゆる移動サービス提供する「Maas」本格展開へ

2019年11月29日(金)17時39分

トヨタ自動車が28日、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験として進めてきた「my route(マイルート)」の本格展開に乗り出した。写真はロサンゼルスで2017年11月撮影(2019年 ロイター/Mike Blake)

トヨタ自動車が28日、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験として進めてきた「my route(マイルート)」の本格展開に乗り出した。自動車の所有から利用への動きが進む中、トヨタは「自動車をつくって売る会社」から、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」への転換を目指している。「マイルート」はその試金石となる。

新たな収益の芽

「マイルート」が提供するMaaSは、スマートフォンのアプリ利用者が、電車やバス、タクシー、レンタカー、カーシェアなど多様な移動手段を組み合わせ、目的地までの最適なルートを検索したり、乗車予約・決済ができたりするサービス。

ルート周辺の店舗・イベント情報を提供するほか、自動車メーカーらしい情報も活用する。例えば、道路の渋滞状況によってバスの到着時間が変わることから、道路状況を反映した交通手段や最適なルートを提案することで、既存の経路検索サービスとの差別化を図る。

トヨタは昨年11月から西日本鉄道(西鉄)と福岡市で「マイルート」の実証実験を行ってきたが、今回はサービス提供地域を北九州市にも広げ、新たに九州旅客鉄道(JR九州)が参画した。

トヨタがMaaSに取り組むのは、乗用車が今までのようには売れなくなる時代の到来に備え、新たな収益の芽を育てるためだ。

プラットフォーマーとして存在

自動車メーカーとしてレンタカーやカーシェアのサービスと車両を提供する以外にMaaSに組み込めそうなのは、観光地や駅から自宅までの近距離移動用のキックボードや車いすなど超小型電動モビリティーだ。

SBI証券の遠藤功治企業調査部長は、超小型モビリティーは「MaaSの布石になり得る」とみている。トヨタは来年冬ごろに電動キックボードのような立ち乗り型、21年に座り乗り型と車いすに連結できるタイプの超小型モビリティーを投入する予定だ。

トヨタはすでに超小型電気自動車「iーROAD(アイ・ロード)」などのシェアサービス実験も展開しており、「マイルート」での超小型モビリティ―の活用も「当然、検討していく」(担当者)という。

超小型モビリティーの販売価格は乗用車に比べてケタ違いに安く、従来事業の規模に育てるのは容易ではない。PwCコンサルティングの早瀬慶パートナーは、トヨタに限らず、どの自動車メーカーにとっても今後は「オペレーターやプラットフォーマーとしてのビジネスモデルが不可欠」と話す。

アプリの利用は無料とする一方、トヨタは「マイルート」のプラットフォームや決済システムを開発・運営し、収益の機会を探る。パートナー企業の西鉄やJR九州からプラットフォーム利用料を得て、同企業の要望に合わせて1日乗車券など「マイルート」でのサービスを開発する。独自の電子決済手段「トヨタ Wallet」やレンタカー・カーシェアのサービスも連携させる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えた

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中