最新記事

ドイツ

EUの経済大国ドイツ、対中輸出に陰り 「蜜月」見直しの声も

2019年11月16日(土)08時00分

過去30年間、欧州最大の経済大国であるドイツにとって、自国製の自動車、機械、エンジニアリングツールに対する中国の旺盛な需要は、成長の安定した原動力として、歴代のドイツ政権もその恩恵をありがたく享受してきた。写真はドイツ・コンスタンツの街並み。2015年1月撮影(2019年 ロイター/Arnd Wiegmann)

過去30年間、欧州最大の経済大国であるドイツにとって、自国製の自動車、機械、エンジニアリングツールに対する中国の旺盛な需要は、成長の安定した原動力として、歴代のドイツ政権もその恩恵をありがたく享受してきた。

だがその勢いにも陰りが出始めている。中国経済は減速し、ドナルド・トランプ米大統領の「米国第一」政策がグローバル貿易に打撃を与え、かつてはドイツ巨大企業の顧客だった中国の工場がライバルになりつつある。

米中対立がブレーキに

いまドイツ経済は厳しい局面を迎えており、対中貿易の減速は厄介な問題だ。ドイツは今年第2四半期に0.1%のマイナス成長となり、一部のアナリストは、11月14日に発表される予定の第3四半期の国内総生産(GDP)データも同様の減少を示すと予想している。そうなれば、2013年以来初めてのリセッションに陥ることになる。

3.4兆ユーロ(3.8兆ドル)規模を持つドイツ経済のうち、対中国貿易が占める比率は決して大きくないが、ドイツ政府としては、年々成長を期待できる数少ないGDP構成要素の1つだった。

「メイド・イン・ジャーマニー」製品に対する中国からの需要は頭打ちになっており、一部には減少を示す指標もある。経済が停滞するなかで、かつて高収益を得られた輸出市場は従来ほど頼りにならないことが判明している。

ハンブルク港でシニアマネジャーを務めるアレックス・マッターン氏は、「中国は我が国にとって最も重要な貿易相手国だが、将来のトレンドは予測しがたい」と話す。この港でも、中国経済の減速と、米中間の対立が貿易にブレーキを掛けている兆候が現れている。

ドイツ・中国間の通商関係の落日と称するには時期尚早だが、猛烈な成長が一段落したことで、近年進めてきた中国との経済的連携のいっそうの強化がドイツにとってプラスだったのかいう議論が再燃している。

産業界の一部には、貿易を通じて中国が開放的な経済と公平な市場アクセスを備えた西側スタイルの国家に変わっていくという期待から、中国における人権侵害に目をつぶってきた政治家は、騙されていたという見方もある。

「希望的観測だったことが明らかになった」と語るのは、ドイツ産業連盟(BDI)のステファン・マイア氏。同氏は、ドイツはもっと現実主義的な対中国政策をとるべきだという主張で知られている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イランの「演習」把握 トランプ氏と協

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中