最新記事

不動産

インドから上陸した「不動産業界のアマゾン」 敷金礼金ゼロ「スマホで完結」のカラクリとは

2019年3月18日(月)12時30分
一井 純(東洋経済記者) *東洋経済オンラインからの転載

東京・新宿区内の新築マンション。一部屋約10平方メートルで家賃は8.7万~9.6万円。およそ半数の部屋がOYO LIFE経由で貸し出される(記者撮影)

敷金・礼金・仲介手数料は無料、契約手続きはすべてスマホで完結。不動産屋に出向くことはおろか、紙での書類のやり取りも一切なし。賃貸住宅にもいよいよIT旋風が吹き始めた。

仕掛けたのはインド発のホテル運営会社OYO(オヨ)だ。OYOはインドのほか、インドネシアや中国、イギリスなど世界8カ国で事業を展開する。日本ではヤフーと共同で「OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(商標:OYO LIFE)」を設立した(OYO66.1%、ヤフー33.9%出資)。

日本ではホテルではなく、賃貸住宅事業に進出する。その理由についてOYO LIFEの勝瀬博則CEOは、「日本の賃貸住宅市場は約12兆円と、ホテル市場の10倍。ホテルは競争が激しいが、賃貸住宅ではホテルのように合理的な商品やシステムが成熟していない」と語る。「OYOはリビングスペースを提供する会社。賃貸住宅とホテルとの間に明確な違いは見出していない」(同)。

ライフスタイルに合わせて住居を変える

OYO LIFEの賃貸事業では、面倒な手続きをすべてすっ飛ばした。Webサイト上で入居したい住宅を選んで必要事項を入力するだけ。保証人は不要、保険や光熱費の契約もOYO LIFEが行い、部屋には家具家電が完備され、身一つで引っ越しが可能だ。サイト上には都心部を中心にワンルームマンションなどが数多く表示され、3月中に1000部屋の取得を掲げる。

家賃と共益費、そして退去時の清掃費以外は原則として費用がかからない。つまり敷金や礼金、仲介手数料は無料だ。狙うのは、自分のライフスタイルに合わせて住居を転々とすることに魅力を感じる若い世代。退去にかかる金銭的、時間的コストを最小限に抑えることで、春は桜の見えるところ、夏は海に近いところといったように、気軽に住み替える需要を掘り起こす。

「既存の不動産業者とは友好的にやっていきたい」(勝瀬CEO)と話すが、型破りなOYO LIFEのビジネスモデルに対しては「不動産業界にもいよいよ『黒船』が襲来した」との声もある。契約電子化と明朗会計という賃貸住宅にありそうでなかったサービスは、どのようにして誕生したのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳、国交樹立75年で祝電 関係強化を表明

ワールド

仏大統領、ガザで使用の武器禁輸呼びかけ イスラエル

ワールド

世界各地で反戦デモ、10月7日控え ガザ・中東戦闘

ビジネス

中国住宅販売、国慶節連休中に増加 景気刺激策受け=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」の中国が世界から見捨てられる
  • 2
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシア製よりはるかにスマート
  • 3
    野原の至る所で黒煙...撃退された「大隊規模」のロシア軍機械化部隊、密集した車列は「作戦失敗時によく見られる光景」
  • 4
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 5
    職場のあなたは、ここまで監視されている...収集され…
  • 6
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 7
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 8
    新NISAで人気「オルカン」の、実は高いリスク。投資…
  • 9
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 10
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 8
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中