最新記事

ビジネス

ネットワークと「80対20」が変化を起こす4つの理由

2018年10月25日(木)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

では、ネットワークとは何か?

ワイヤード誌の元編集者のケヴィン・ケリーの説明が的を射ている。


ネットワークは、最小の構造的機構で、いかなる構造ももちうるといえる。

フェイスブックとツイッターはネットワークである。テロ組織や犯罪集団、政治団体、フットボールチーム、インターネット、国連、友人グループ、世界の金融システムもネットワークである。爆発的に成長し、桁外れの富を築いているインターネット関連、アプリ関連の企業――アップル、グーグル、イーベイ、ウーバー、アマゾン、ネットフリックス、エアビーアンドビーは、ネットワークか、自社の生態系にネットワークを抱えている。

ネットワークは、従来のトップダウン型の組織とどう違うのだろうか。

まずは、決定的な違いからみていこう。一般的な組織は、国の官僚組織や軍隊からはじまり、農家、商店、製粉所や工場へと広がり、過去三世紀に産業界や社会全般にみられるようになったが、こうした組織の成長はトップのイニシアチブにかかっている。

伝統的な組織は、トップが計画を立てなければ成長できない。たいてい細かい点まで計画されている。製品設計や製造、マーケティング、販売といった活動をとおして計画は実行に移される。どれもコストがかかり、骨が折れる。組織が大きくなり、影響力を発揮するまでには、長い時間と膨大な労力がかかり、多くの人材と資金を投入する必要があった。

ネットワークは違う。その成長は、ネットワークを所有または支援する組織(があるとしても)の内部から起こるのではなく、外で起きる。ネットワークのメンバーの行動によって、ネットワーク自体が成長する。ネットワークを所有するのが企業であれば、「メンバー」は「顧客」や潜在顧客でもある。ネットワークが成長するのは、内部のダイナミクスのせいでもあるし、成長することがメンバーの利益に適うからでもある。

(中略)

ここから、ネットワークの第二の特性が浮かび上がる。ネットワークは、規模が大きくなるほど価値が高まる。それだけではない。メンバーにとって、そしてネットワークの所有者にとって、価値は直線的ではなく幾何級数的に増えていく。ある町か地域を拠点としたデートクラブに一〇〇〇人の会員がいて、他の会員とのデートを狙っているとする。このネットワークに入りたいと思うだろうか。そうは思えない。小さすぎる。

だが、会員が倍の二〇〇〇人だったらどうだろう。ネットワークの価値も倍になるだろうか。そうではない。じつは価値は四倍になる。会員の組み合わせは四九万九五〇〇通りから、一九九万九〇〇〇通りに増えるからだ。

(中略)

メンバーの活動によって比較的簡単に成長できる、規模の拡大によって価値が幾何級数的に増える、という二つの特質から、三つめの結論が導かれる。ネットワーク組織は、ほかの組織よりも圧倒的に速く、価値を獲得できる。だからこそ、アマゾン、イーベイ、フェイスブック、アリババ、エアビーアンドビー、ウーバーといったネットワーク型の新興企業の価値が、これほど短期間でこれほど上がったのだ。非ネットワーク型企業で、ここまでのペースで企業価値が高まった例はない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦闘機を撃墜する「世界初」の映像をウクライナが公開
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中