最新記事

東欧

ロシア経済は今が買い時? 逆境下の団結が生んだ好景気

商店街は人であふれ、すし屋の出前が街を行き交う。制裁を物ともしない意外な繁栄の実態とは

2015年4月23日(木)12時03分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

危機? 制裁の影響を感じさせないショッピングセンター(筆者撮影) PHOTO BY AKIO KAWATO

 毎年この時期はモスクワに講義に出向く。今年は欧米の制裁と原油価格の暴落で荒れた感じかと思って出掛けたが、1年前より雰囲気はむしろ良かった。

 制裁と原油暴落のダブル・パンチを「何くそ」という団結心で乗り切ろうとしているかのようだ。ユニクロもあるショッピングセンターは欧米をしのぐ贅沢な雰囲気で、商品はあふれ大変な人出だ。地下鉄では老人や子供に席を譲る姿がはるかに増えるなど、危機が市民の団結を高めている。「危機」という言葉がテレビで繰り返される一方、「『危機』の時にこんな安い航空券があるなんて。今度の休暇はこれでトルコへ」などという会話も側聞した。

 ロシアでは、インフレに備えて買いだめが昨年末に起こり、自動車などの在庫は一度にはけた。そのあおりで今年に入って個人消費は4・5%、投資は1〜2月で6%強低下(いずれも対前年同期比)しているが、インフレ率は次第に収まる傾向を示している。それは、昨年最大90%強も下がった通貨ルーブルが下げ止まり、2月以降約25%の回復を見せたことに支えられている。モスクワの株価指数は1〜2月で30%弱伸び、今年世界で最も伸びた市場と言われるほどだ。

 ルーブル下落は一部の輸入代替生産を盛んにしている。食品生産では約4%の上昇(1〜2月、対前年同期比)。ソ連崩壊後の90年代前半の大混乱期には、ロシアを大嫌いだと公言して国外に移住する青年が多かったが、僕が今回教えた学生たちにその気はない。一時減少したベンチャー志向も、わずかながら増えてもいる。

 現在の油価1バレル=50ドル強は、暴落したとは言っても05年と同レベルにある。過去の例からすれば、1人毎月130ドル、家族4人の標準世帯なら毎月520ドルを資源輸出から得る計算になる。平均月収1000ドル程度の国にとって、こうした収益は経済の基礎体力となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ・ホンダ・マツダ・ヤマハ発・スズキ、型式指定

ワールド

インドの格上げ、今後2年の財政状況見極めながら検討

ビジネス

財新中国製造業PMI、5月は2年ぶり高水準 生産と

ワールド

メキシコ、初の女性大統領誕生へ 与党シェインバウム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 6

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中