最新記事

ギリシャ

脱税天国ギリシャで始まる金持ち狩り

財政再建のため徴税強化に取り組む政府は、巨額脱税者のリストをネットで公表すると宣言

2011年11月28日(月)16時53分
ケン・マグワイア

滞納しすぎ 正当な処罰を求める世間の声が政府を動かした(アテネの抗議デモ) John Kolesidis-Reuters

 債務危機に陥っているギリシャにとって、徴税強化は大きな課題。ギリシャ政府は「脱税天国」の汚名を返上すべく、巨額の税金逃れをしているビジネス界の大物たちの逮捕に踏み切っている。脱税が国家財政に与える損害は、年間200億ドル以上。この国が借金漬けになった理由の一つでもある。

 政府は、莫大な脱税を働いた人々の名前を近く公表する方針だ。11月半ばにエバンゲロス・ベニゼロス財務相は議会に対し、個人情報の問題がクリアできしだい、数週間以内に脱税者のリストをインターネットに掲示すると宣言した。

 主要紙カシメリニによれば、先週は民放テレビ局「オルタ」のコンスタンティノス・ギアニコス社長が付加価値税150万ドルの脱税容疑で逮捕された。

 今月に入って、62歳のビジネスマンが約1100万ドルの付加価値税を脱税したとして訴追されている。北部の都市テッサロニキでも、追徴課税をそれぞれ19万ドル収めていなかったとして2人のビジネスマンが逮捕された。「正当な処罰がなされていない、と世間が抗議した結果だ。正しい方向への第一歩だ」と、国際的な汚職監視団体トランスペアレンシー・インターナショナルのギリシャ支部長、コスタス・バコウリスは語る。

 バコウリスは、ギリシャが脱税一掃に成功するには「やるべきことが山積みだ」と言う。徴税システムがほとんど機能していないからだ。

IMFの脱税対策チームが活躍

 欧州委員会(EUの行政執行機関)の特別調査委員会が最近発表した報告書はこう指摘している――ギリシャでは820億ドルの税金が未払いになっている。しかし政府が徴収しようとしても、腐敗した裁判制度に阻まれてしまう。

 ギリシャでは長年にわたり、脱税が人々にとって一種の「娯楽」になっている。その傍らで政府は浪費を続け、巨額の負債を積み上げてきた。

 しかしここ1年半で政府の徴税能力は向上している。欧州委員会の報告書によれば、これはIMF(国際通貨基金)が派遣した脱税対策チームに負うところも大きい。「ごく一握りの担当者が新たな手法を使っただけで」、今年前半に1億5400万ドルの未納金を集めることができたという。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時153.00円まで4円超下落、現在154円

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中