最新記事

世界経済

史上最高値、金を買うこれだけの理由

アメリカとヨーロッパ諸国にデフォルトの危険性がちらつく中、投資家は安全な逃避先を求めて貴金属に殺到しはじめた

2011年7月19日(火)15時06分

安全な逃避先 債務危機に株価や通貨の下落、もう金に逃げるしかない? Nicky Loh-Reuters

 世界の投資家がアメリカとヨーロッパの債務危機を懸念する中、今週月曜に金相場が1オンス=1600ドルを突破し、史上最高値を更新した。
 
 英ガーディアン紙は銀相場も2%上昇し、40ドルを超えたと報道。5月初旬以来の高値となった。米連邦債務残高の上限引き上げをめぐる交渉が米議会で続き、投資家たちがギリシャをはじめスペインやイタリア、アイルランドなどのヨーロッパ諸国のデフォルト(債務不履行)に対する懸念をいっそう強める現状においては、金と銀の価格は今週中も上昇を続けるだろうと、金融アナリストたちは見ている。

 EU域内の主要銀行90行のストレステスト(健全性の審査)の結果が先週発表されたのを受け、アメリカとヨーロッパの株式市場は1%以上下落した。この結果は金曜日の市場取引終了後に発表されたが、対象となった90行中8行が不合格となり、資本不足の総額は25億ユーロに達した。

 さらなる懸念材料は、証券大手ゴールドマン・サックスの発表だ。アメリカの2011年第2四半期の実質経済成長率見通しを2%から1.5%に下方修正し、第3四半期についても3.25%から2.5%に下方修正するとした。

 このため投資家たちは安全な逃避先として貴金属に走っている。不況下ではよくある選択だ。金相場は7月始め以来、8%近く上昇。7月12日に米連邦準備理事会(FRB)が一段の金融緩和が必要になる可能性があるとの見方を示すと、金相場はさらに急騰した。追加の金融緩和はアメリカドルをさらに弱体化させる可能性がある。

「景気が再び悪化していることを人々が認識するようになり、米政府はさらなる景気刺激策の必要性を模索している」と、米運用会社ヴァン・エック・グローバルの旗艦ファンドで金投資のポートフォリオマネージャーを務めるジョー・フォスターは米CNNマネーの取材で話した。

 それでもまだ実質的には、今の金相場は1オンス=825.50ドルを記録した1980年1月21日を超えたとはいえない。当時のこの金額は、今の貨幣価値なら1オンス=2261.33ドルに相当するからだ。1980年当時、投資家たちは2桁台のインフレからの安全な逃避先として金投資に殺到していた。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界債務、過去最大の324兆ドル 年初来のドル安影

ビジネス

米英、貿易協議で前進 鉄鋼・車の関税割当下げ含む公

ビジネス

米ドアダッシュ、英デリバルーを39億ドルで買収へ

ワールド

ドイツ首相にメルツ氏、1回目投票で決まらず政権不安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    分かり合えなかったあの兄を、一刻も早く持ち運べる…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 7
    「欧州のリーダー」として再浮上? イギリスが存在感…
  • 8
    首都は3日で陥落できるはずが...「プーチンの大誤算…
  • 9
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 10
    メーガン妃の「現代的子育て」が注目される理由...「…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中