最新記事

中国経済

中国人も戸惑う人民元切り上げ

輸出業者もエコノミストも、当局の曖昧な声明に不意を突かれた

2010年6月22日(火)18時10分
キャスリーン・マクローリン(北京)

商売はどうなる? 6月21日、人民元札を眺める中国北部・山西省のスイカ売り Reuters

 人民元相場の弾力性を高め、過去23カ月続いた事実上の対ドル固定相場制を廃止するという6月19日夜の中国人民銀行(中央銀行)の発表には、今更誰も驚かなかった。だがその影響となると、専門家さえ予測できずにいる。

 人民元相場はどれほど上昇するのか、そもそも本当に上昇するのかどうか、北京のエコノミストたちの意見はバラバラだ。

 北京以外でも、国中の製造業者が人民元高がどれぐらい収益を圧迫するのか、とりわけ既にドル建てで成約済みの輸出から受け取る人民元の売り上げがどれだけ減るのか気を揉んでいる。

 つまり人民元の切り上げ自体はいつかは来ると分かっていたものの、人民銀行のいささか曖昧な発表には不意を突かれてしまった、というわけだ。

「我々は人民元改革を一歩進め、人民元の弾力性を高めることにした」と、人民銀行は声明で言う。世界的な金融危機の間も中国経済の安定を下支えする役割を果たしてきた、と人民銀行が自画自賛する人民元の対ドル固定相場制はこれで終わった。

 声明後初めての為替取引が行われた21日の人民元相場は、対ドルで05年7月以来の最高値を更新した。ただし先週末からの上昇率は0・42%にとどまった。

アメリカをなだめる意味しかない

 中国のエコノミストは今のところ、今回の発表の影響はそれほど大きくないと見ている。対ドル固定相場制を止めることで、人民元相場は上昇どころか下落する可能性さえあるとの声まで上がっている。

 中国のシンクタンク中国社会科学院のエコノミスト袁鋼明(ユアン・カンミン)は、人民元相場の上昇が望ましいと考えているが、人民銀行の発表には、人民元の切り上げを求めるアメリカをなだめる意味しかないと考えている。中国経済は不安定な状態にあり、政府が製造業の業績を圧迫するような急激な政策転換をするはずがないと袁は言う。

 人民元相場は「今年いっぱいは変わらないだろう」と、袁は予測する。他の多くのエコノミストは袁ほど懐疑的ではない。だがそうは言っても、人民元の行方については誰もわからないのが正直なところだ。

 中国の輸出企業数社は21日、人民元高が業績を圧迫すると懸念を表明した。中国では既に労働者の賃金や設備費が上昇しており、人民元が上昇すれば更に経営は苦しくなる。

「どんな対処ができるか、まだ分からない」と、福建省の玩具メーカーで貿易を担当するシアオ・チャンは言う。「何かいいアドバイスをくれないか?」

 人民銀行の「改革」の真意がはっきりするまで、それは誰にも不可能だ。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾ

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中