最新記事

アップル

やっぱりiPhone4は「失敗作」だ

さまざまな新機能が追加されたものの、スマートフォンにはもはや劇的な変化は期待できない

2010年6月8日(火)17時11分
ケビン・ケレハー

期待はずれ 事前に情報が漏れていたせいもあり、新型iPhoneはサプライズを演出できなかった Robert Galbraith-Reuters

 何の面白みもない、というつもりはない。アップルのCEO(最高経営責任者)、スティーブ・ジョブズが6月7日に発表したiPhoneの新機種「iPhone4」のことだ。

 この新型スマートフォンにはさまざまな興味深い改良が加えられており、普通のIT機器メーカーだったら「大変革」をアピールできる代物だ。だが、アップルは普通のIT機器メーカーではない。既存の製品を改良しただけでは、期待はずれに感じられてしまう。

 酒に酔ったアップル関係者がシリコンバレーのバーにiPhone4の試作機を置き忘れたせいで、新機種に関する情報がすでに漏れ伝わっていたことも、気分が盛り上がらない要因だ。情報漏洩の影響を否定したいジョブズは、後方の大型スクリーンにiPhone4を映し出し、さりげない様子でこう言った。「これを見たことがあったら、教えてほしい」

 情報漏洩のせいでiPhone4の販売に悪影響が出ることはないだろう。だが、アップルがマーケティング戦略の要としてきたジョブズの基調講演のサプライズ効果は、すっかり消え失せてしまった。

 ジョブズのスピーチにはいつも何らかのサプライズが仕込まれている──そんな期待が強いために、平凡なプレゼンテーションでは失敗作というイメージを植えつけかねない。そして、実際、iPhone4は失敗作だ。

 より薄くなったボディー、iPadにも使われているプロセッサ「A4」の採用、アンテナの役割も果たす側面のステンレス。どれも歓迎すべき改善点だが、必須ではない。iPhoneの画面でiPadと同じクオリティーの画像を楽しめる高精細の「網膜ディスプレイ」も、マストアイテムとはいえない。

MP3と同じ運命をたどる?

 アメリカのiPhoneユーザーの多くはAT&Tと2年契約を結んでいる。そのため、契約が切れてベライゾンに乗り換えられるようになったらiPhone4を買おうか......と考えている人は多いはず。ユーザーがiPhone4へのアップデートを躊躇する本当の要因は、魅惑的な新機能がないことではなく、AT&Tに早期解約の違約金350ドルを支払わなくてはいけないからだからだ。

 それに、いまiPhone4を買って2年間も契約に縛られるのはバカらしい。1年もすればまた次世代iPhoneが登場するかもしれないし、グーグルの携帯向けOS(基本ソフト)「アンドロイド」に乗り換えたくなるかもしれない。

 結局、現時点ではスマートフォンには大々的な変革の余地はないということなのかもしれない。スマートフォンは過去2年間で劇的に進化したが、今後も同じペースで進化が続くはずはない。

 手軽に音楽を再生できるMP3プレーヤーも、市場に出て数年後には改良の余地がなくなった。やがてMP3はiPodに主役の座を奪われ、さらに音楽再生機能の枠を越えたiPodタッチが登場した。

 スマートフォンの世界でもおそらく同じことが起きるだろう。新機能が追加されるのではなく、従来の製品の枠を一気に超える画期的な発明によって、まったく別の新商品が登場するのだ。

 それが何かを想像するのは難しい。スティーブ・ジョブズの頭の中にはすでにアイデアがあるのかもしれないが。

The Big Money特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中