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欧州経済

ギリシャの赤字は次なる危機の予兆か

2009年12月18日(金)13時13分
シュテファン・タイル

 11月末に起きたドバイ政府の債務繰り延べをめぐる騒ぎが金融危機終盤のさざ波だとすれば、12月に入って露呈したヨーロッパ各国のひどい財政赤字は、次なる経済危機の前兆かもしれない。

 複数の格付け機関がギリシャ国債の格下げを発表し、さらにほかの数カ国の国債の先行きについても警告を発すると、ヨーロッパ各国の株価は一斉に下落した。

 ギリシャは1948年以降で債務不履行になる初の先進国となるかもしれない。財政赤字はGDP比12%以上に上り、政府には赤字縮小の意思も能力もないらしい。まずいことに、スタンダード&プアーズ(S&P)は9日、スペインの格付け見通しも「ネガティブ」へと引き下げた。

 ドイツのメルケル首相とフランスのラガルド経済財務雇用相は、EU域内の経済大国は他の加盟国を見捨てないと示唆し、投資家たちを安心させた。

 だがうわべの団結の陰で、ギリシャやスペイン、アイルランドのような浪費国家向けの支援をドイツのような健全な国が負担すべきか、という論争も繰り広げられている。ドイツは今のところ、政府による財政赤字からの脱却計画を推し進めるEUで唯一の国だ。

 欧州最強の経済国として、ドイツは近隣諸国に浪費を続けさせる一方で自国が増税や支出削減の痛みに耐えるつもりはないはず。ドイツ政府や欧州中央銀行は今後、浪費国家に対して言うことを聞くよう圧力をかけるだろう。これらの国々にさらに低い成長率を強いる可能性もある。

[2009年12月23日号掲載]

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