最新記事

米景気

Xマス商戦の速報データは無意味

いま相次いで発表されているクリスマス商戦の数字が経済の先行きを教えてくれない理由

2009年12月7日(月)18時02分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

運命の日? 11月27日の金曜日にアメリカの小売業界はクリスマスシーズンに突入 Shannon Stapleton-Reuters

 アメリカのすべての経済活動の70%を占めるのは個人消費。その個人消費の動向を探る上で重要な手掛かりとされてきたのがクリスマス商戦だ。

 09年冬のクリスマス商戦に関するデータは、既にタイガー・ウッズの愛人情報も顔負けなくらい猛烈な勢いで飛び交っている。問題は、情報の満足度もウッズの不倫報道レベルだということだ。ひっきりなしに最新情報が飛び込んでくるが、状況を正確に把握する役にはほとんど立たない。

 国際ショッピングセンター協会の予測によれば、アメリカのクリスマス商戦の売り上げは前年比で1〜2%増加するという。同協会の実施した調査によれば、消費者は前年よりプレゼント購入のための支出を増やすつもりらしい。

 その半面、これまでに入ってきている数字は悲惨だ。調査会社ショッパー・トラックによると、クリスマス商戦の幕開けを告げる「ブラック・フライデー」(11月末の感謝祭の祝日明けの金曜日)の売り上げは、前年比で0.5%しか伸びていない。

スタートがいいと後が怖い?

 全米小売業協会によれば、感謝祭直後の週末に買い物をした人は前年より増えた。お店やオンラインショッピングサイトを訪れた人の数は1億9500万人に上った(08年は1億7200万人)。しかし実際に使った金額は、08年の平均327.57ドルから343.31ドルへと7.9%落ち込んだ。

 もっとも、上々の数字を叩き出している業界もある。マスターカードの調査部門によれば、11月の家電の売り上げは前年比で6.6%増加したという。

 これでは頭が混乱しても無理はない。しかも、この種のデータは互いに食い違っているだけでなく、そもそも不完全だ。この種の調査結果の多くは、網羅的な統計というより断片的な調査に過ぎない。

 それに、マラソンの最初の3キロのタイムをもとに最終的な成績を予測するのには無理がある。ウォールストリート・ジャーナル紙も指摘しているように、マスターカードの調査部門によれば08年の感謝祭直後の週末の売り上げは前年比1%減だったが、終わってみればクリスマスシーズン全体の売り上げは6.3%も下落した。

 もし消費者が買い物をする時期を早めているだけだとすれば、シーズンのスタートダッシュがよくても朗報とは限らない。実際、国際ショッピングセンター協会の調べによれば、回答者の16%がブラック・フライデーに買い物を始めると述べており、この数字は08年の10%より6ポイント高い。

ネット通販「好調」のカラクリ

 オンラインショッピングの売り上げ増も額面どおりには受け取れない。経済成長が停滞しているこの時期に、売り上げが5%前後伸びたと聞けば感心する人も多いかもしれない。

 しかし、別に感心するようなことではない。長い目で見て、小売市場に占めるオンラインショッピングの相対的な比率が上昇し続けていることを考えれば、感謝祭明けの最初の月曜日(「サイバー・マンデー」と呼ばれる)の売り上げが年々増えるのは当たり前だ。

 いや、今年はそれもおぼつかないかもしれない。サイバー・マンデーにオンラインショッピングの売り上げが伸びるのは、職場でインターネットにアクセスして買い物をする人が多いからだと、一般に言われている。しかし今年は、昨年に比べて「職場」のある人がかなり減っている。

 データの問題点はまだほかにもある。来客数や売り上げが伸びたとしても、それが出血大サービスおかげだとすれば、業者の利益は見掛けほど多くない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サムスン電子、第3四半期は32%営業増益へ AI需

ワールド

ベネズエラ、在ノルウェー大使館閉鎖へ ノーベル平和

ビジネス

英中銀、今後の追加利下げの可能性高い=グリーン委員

ビジネス

MSとソフトバンク、英ウェイブへ20億ドル出資で交
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中