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世界経済

「はだかの王様」ドルの勘違い

2009年9月30日(水)18時23分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

他国を翻弄する政策こそドルの敵

「公平さ」に関する議論で納得しないのなら、アメリカが基本的価値として重視する「競争」の観点から考えてみたらどうだろう。ドルに代わる基軸通貨はないといううぬぼれが、これまでどんな事態を引き起こしてきたか。

 アメリカ人はとんでもなく向こう見ずな資産運用をし、借金まみれになり、ドル資産を保有する他の国々をいいように振り回した。ドルに代わる基軸通貨を求める声が高まっているのはその結果だ。アメリカに基軸通貨としてのドルを適切に管理する能力が足らないことは明らかだ。つまり他の分野と同じようにドルにも競争が必要なのだ。

 もし急激なドル売りが起きたら、アメリカは壊滅的な打撃を受けるのか。もちろんだ。だがすでにドルに代わるものは存在する。例えば現在ばかばかしいほど高騰していて、なおも上昇を続けている金。さらに原油などの日用品も、ドルに代わる安全な投資先として取引されている。

 別の言い方をすれば、市場にはすでに「代替基軸通貨」を求めているということだ。もっとも投資家は慎重だから、定着には時間がかかるだろう。その間に、われわれはどちらのマイナスが大きいかを考えることができる。変化を受け入れるのか、あるいは現実離れした考え方にしがみついて、自分たちの悪癖(向こう見ずな投資や借金)を続けるのか。

 国際経済システムはアメリカが協力しようとしまいと進歩する。現在のドルにとって最大の脅威は新しい基軸通貨を求める声ではなく、そうした要求を起こさせているアメリカの政策である。そろそろアメリカはまじめにこの議論に加わるべきだ。ゼーリックの発言は、その方向に向けたとても建設的な第一歩だ。

Reprinted with permission from David Rothkopf's blog, 30/09/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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