最新記事

心臓の弱い人は要注意!

アカデミー賞を追え!

異色の西部劇から傑作アニメまで
2011注目の候補を総ざらい

2011.02.21

ニューストピックス

心臓の弱い人は要注意!

実話を基にした究極のサバイバル映画『127時間』は、試写会で失神者が続出

2011年2月21日(月)16時09分
ケイティー・マロニー

 血が苦手な人や閉所恐怖症の人、映画の最中に2回は怖くて目をつぶるという人は、『127時間』が実際の倍の長さに感じるだろう。気の弱い人にもおすすめできない作品だ。

 主演のジェームズ・フランコが演じるのは、登山家アーロン・ラルストン。03年、登山中に落ちてきた岩に右腕を挟まれて127時間身動きが取れなくなり、小型ナイフで自分の腕を切り落として生還した実在の人物だ。

 ムービーライン誌の調査によると、試写会ではすでに13〜16人が失神。2人がめまいを訴えたとされ、3人が発作を起こした。血みどろの『ソウ』や恐怖をあおる『パラノーマル・アクティビティ』などのホラー作品でも、めったにない現象だ。

「予想を超える衝撃ではない」と、全米劇場主協会のパトリック・コーコランは言う。それでもここまで激しく反応するのは、むき出しのリアリズムが作用したのかもしれない。

生々しさが恐怖をかき立てる

 ボストンのブリガム・アンド・ウイメンズ病院のマーティン・A・サミュエルズ神経科部長によると、人はトラウマを引き起こすような架空の出来事を見ながら、実際に自分が危険にさらされているかのように混同し、肉体的に強い反応を示す場合がある。あまりに強烈な恐怖を味わうと血圧が上昇し、めまいや失神を招くのだ。

 映画を見て失神する人は、献血の際などに失神した経験のある人も多い。似たような反応は自然災害など極度のストレス下でも起こり、重要な臓器にアドレナリンのような化学物質が放出される。「短期的かつ大量に放出されると心拍のリズムがおかしくなって、死に至りかねない」と、サミュエルズは言う。

 過去にも『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『バベル』で、カメラワークがぶれ過ぎるせいで嘔吐する人がいた。04年には『パッション』のキリストがはりつけにされるシーンで、女性が心臓発作を起こして死亡。昨年も『アンチキリスト』の生々しい切断シーンに強い拒否反応を示した人がいた。

 もっとも、こうした作品の大半は目を覆いたくなるような内容を隠さずに宣伝しているという反論もある。全米映画協会も、不快さや動揺を招く内容に照らして年齢制限を指定している。今後は「心臓の弱い人は注意」の指定も必要になるかも?

[2010年11月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪ウエストパック銀、新CEOにミラー氏 富裕層部門

ワールド

米とイラク、連合軍撤退計画で合意 26年末にかけ2

ワールド

ギリシャ、クルーズ船観光客に課税計画 オーバーツー

ビジネス

中国人民銀、先週も国債を長期売り・短期買いか=上海
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
  • 3
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 4
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単…
  • 5
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上…
  • 6
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 9
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 10
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 7
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 8
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 9
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 10
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中