最新記事

【15】日本と中国は米国債を買い続けるしかない。

ウラ読み世界経済ゼミ

本誌特集「世界経済『超』入門」が
さらによくわかる基礎知識

2010.04.12

ニューストピックス

【15】日本と中国は米国債を買い続けるしかない。

2010年4月12日(月)12時00分

米国債とはアメリカ政府の借金証書。その借金が、経済危機対応の景気刺激策と金融安定化策のため08年の4450億ドルから09年は1兆7500億ドルに拡大している。米国債のざっと半分を保有する外国政府など国外の投資家が不安を感じて逃げ出せば、アメリカの財政は破綻しかねない。

 米国債は従来、世界で最も安全な投資先だった。アメリカは経済・軍事大国である上、世界のどこでも通用するドルを自ら印刷する基軸通貨国で、元本や利息が踏み倒されるリスクはゼロに近い。年間予算に近い総額3兆謖を外国政府に買ってもらい、財政赤字を埋められるのもそのためだ。

 08年末の時点で世界最大約2兆ドルの外貨準備を持つ中国は、米国債保有高でも7396億ドルで世界一(日本は6348億ドルで2位)。中国は順調に買い増していくとみられていたが、そのペースが金融危機後、大きく鈍っている。日本の保有額も横ばいだ。

 両国が買い渋り始めたのは、財政赤字の拡大やFRB(連邦準備理事会)のドル大量供給によるインフレ懸念などでドル下落のリスクが高まっているため。ドルが下がれば、中国や日本が持つ米国債の価値も下落する。中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相は3月13日、米国債に関して「資産の安全性をやや心配している」と発言した。

 ヒラリー・クリントン米国務長官は2月の訪中の際、中国政府に国債購入への期待を伝えた。中国と日本の経済はまだ外需頼みで、輸出先1位は共にアメリカ。大量の米国債を売り払って関係が悪化すれば輸出に響くし、買わないと暴落を招きかねない。「おねだり」はむげに断れないだろう。

[2009年4月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国版の半導体の集積拠点、台湾が「協力分野」で構想

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中