コラム

「関税帝」トランプが仕掛けた関税戦争の勝者は中国政府?

2025年05月06日(火)19時51分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

人民の思想や考え方を完璧に制御する習

だから、習近平国家主席が直接交渉のテーブルに着くのをトランプが焦りながら待っているとき、習はそれを全く無視し、落ち着いた態度で東南アジア訪問を始めた。習はよく知っている。これから中国経済がどんな困難に直面しようとも、中国人民は「全ての責任はアメリカにある」と一層強く信じるだろうと。

米中両国の関税戦争がこのままエスカレートすれば、双方とも傷を負うだろう。しかし雇用率の向上や米国民の収入増加を気にするトランプと比べて、徹底的なイデオロギー教育で、人民の思想や考え方を完璧に制御している習は明らかに自信を持っている。


トランプの関税に直面しても、中国の官製メディアは自信満々に「天は崩れない!」と叫んだ。天が崩れても、人民が支えるからだ。

ポイント

関帝
後漢末期・三国時代に蜀の劉備に仕えた武将の関羽が神格化。騒乱を鎮撫する武神としてだけでなく、算盤の発案者として商売の神様、財神としても信仰される。各地に関帝廟がある。

米中関税戦争
第1次トランプ政権は、中国製品のシェアの低い品目から4段階に分けて対中関税を順次実施。税率は主に15〜25%で、携帯電話や消費財中心のリストは最終的に実施しなかった。

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プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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