コラム

バイデン「撤退」議論は、リアルタイムで進行中

2024年07月10日(水)14時00分

首都ワシントンで9日に開催されたNATO首脳会議で演説するバイデン Yves Herman-REUTERS

<民主党の一部議員は撤退を要求しているが、バイデン本人は「撤退しない」と強く反発>

6月27日の第1回米大統領選テレビ討論を契機として、バイデン大統領の健康不安が一気に噴出しています。その後、7月5日に大統領は、ABCテレビの独占インタビューに応じています。おそらくは懸念を払拭する意図で行われたと思われますが、ここでも不安を払拭することはできませんでした。

また、大統領サイドからは、テレビ討論の際には大統領は風邪をひいていたこと、またG7サミットから戻ったばかりで、時差ボケがあったという説明がされています。加えて、バイデンとしては、当面は午後8時以降の公務は控えるという発表もありました。


その後、パーキンソン病の専門医が昨年1年間で8回もホワイトハウスに出入りしていたことが明るみに出るなど、日替わりで事態は進んでいます。現時点では、ワシントンDCでは、NATOの首脳会議が行われており、大統領は9日の夕刻にはとりあえずスピーチを無難に終えていますが、相変わらずメディアは大統領の一挙手一投足を注視しているのが現状です。

連邦議会の民主党議員団は激しく動揺しており、主要な議員の多くがバイデンに対して選挙戦から撤退するよう申し入れを行いました。これに対して、大統領からは「自分は撤退しないので党として団結して支持してほしい」という強い口調の書簡が送られています。これを受けて、下院の民主党議員団は9日に議員総会を開いて対応を協議していますが、意見は割れており議員総会ではお互いの意見を聞くことが中心だったようです。上院の議員団でも同じようにさまざまな意見が出ています。

党内抗争だけは避けたい民主党

下院の民主党議員の動向ですが、この11月には全員が改選となるなかでは、意外と慎重な言動も出ています。一時期には撤退論に傾いていたとされる、ジェフリーズ院内総務は当面バイデンで挙党態勢という姿勢を打ち出しました。また左派のリーダーであるAOCことオカシオコルテス議員なども、バイデン支持でブレていません。

ですが、こうした動きは、あくまで「トランプに負けないためには党内抗争だけは避けたい」という思いの反映だという解説もあります。つまり、党内が一気に「バイデン下ろし」に傾けば、議員団も一気に脱バイデンでまとまるというのです。

目下のところは、11日の木曜日にバイデン大統領が行う「単独会見」が大きく注目されています。例えばですが、3月に大統領が両院議員総会に出席して行った「一般教書演説」のような、切れ味の良い話し方ができれば、当面の懸念は沈静化する可能性はないわけではありません。

ですが、この単独会見において、テレビ討論やABCでのインタビューの際に見せた、不明朗で弱々しく、一部に辻褄の合わないような話し方が再現されるようですと、改めて撤退論が加速する可能性があります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

都区部CPI、12月は+2.3%に大幅鈍化 エネル

ワールド

米、ナイジェリアでイスラム過激派空爆 「キリスト教

ビジネス

鉱工業生産11月は2.6%低下、自動車・リチウム電

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、個人の買いが支え 主力株
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story