プレスリリース

障害福祉現場の賃上げ状況調査結果を公表 物価高騰の中で賃金格差は拡大、抜本的な処遇改善を要望

2025年10月28日(火)10時00分
障害福祉関係8団体は、「障害福祉現場の賃上げ状況調査」(調査結果:2025年9月5日~9月22日)を実施しました。
本調査から、障害福祉事業所が着実に処遇改善を実施している一方で、全産業との賃金格差は拡大していること、また、物価高騰の影響と人材確保難が経営上の課題となっており、現行報酬では十分な賃上げができず賃上げ余力も残っていないことなどが明らかになりました。


【調査の概要】
実施団体:公益財団法人日本知的障害者福祉協会
全国社会就労センター協議会
全国身体障害者施設協議会
全国社会福祉法人経営者協議会
全国身体障害者福祉施設協議会
特定非営利活動法人日本相談支援専門員協会
一般社団法人全国介護事業者連盟
一般社団法人全国児童発達支援協議会
回答数 :1,547事業所
サービス類型...比率
日中活動系...30.1%
施設系...18.7%
訓練系・就労系...15.3%
相談系...13.6%
居住支援系...11.6%
児童系...7.6%
訪問系...3.1%


【調査結果から見えた現場の実態】
[Point(1)]障害福祉事業者は着実に処遇改善を実施しているが、全産業との賃金格差は拡大
■拡大する賃金格差
賃上げ額(1事業者あたり平均月額)は令和6年度の9,635円に対し、令和7年度は9,643円と同程度であり、障害福祉事業者が着実に処遇改善を実施していることがわかりました(図1)。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/552329/LL_img_552329_2.png
図1:障害福祉事業所における賃上げ額

しかしながら、賃上げ率は、全産業(春闘)が前年度比0.15%増となっているなか、障害福祉分野は0.12%減となり、全産業との賃金格差は拡大しています(図2)。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/552329/LL_img_552329_1.png
図2:障害福祉分野と全産業の賃上げ率

[Point(2)]物価高騰の影響と人材確保難が経営上の課題となっており、現行報酬では十分な賃上げができず、賃上げ余力も残っていない
■事業所における経営上の課題
回答した障害福祉事業所の95.6%が経営上の課題を感じていることがわかりました。
そのうち、主な課題として、92.2%が「物価高騰の影響により支出が増加している」こと、76.0%が「サービス提供に必要な人材が確保できない」ことを挙げています(図3)。

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/552329/LL_img_552329_3.png
図3:経営上の課題を感じているかと、感じている場合の主な課題

■事業所における賃上げ上の課題
回答事業所の92.8%が賃上げを行う上での課題を感じていることがわかりました。
そのうち、主な課題として、85.0%が「現行の報酬では十分な賃上げ額が確保できない」、73.3%が「現行の報酬では幅広い職種の賃上げが十分できない」と、現行の報酬の不十分さを挙げています。また、77.4%が「物価高騰による支出増加のための賃上げ余力が不足」、60.1%が「最低賃金引上げに対応すると他の職員の賃上げ余力がない」と、賃上げ余力の不足を挙げています(図4)。

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/552329/LL_img_552329_4.png
図4:賃上げ上の課題を感じているかと、感じている場合の主な課題

【調査結果を踏まえた対応】
障害福祉関係8団体では、本調査結果から見えた深刻な現場実態を踏まえ、今後も障害福祉事業所が必要な人材を確保し、障害のある方に質の高い福祉サービスを継続していくため、処遇改善の抜本的な拡充等が必要とし、国等に下記4点を緊急要望していきます。

1. 全産業と遜色ない処遇水準に向けた加算額、報酬の大幅な引上げと早急な実施
2. 報酬への賃金スライド制・物価スライド制の導入
3. 処遇改善の制度間一元化、対象事業・職種と法人裁量のさらなる拡大
4. 物価高騰対策にかかる財政支援の拡充


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プレスリリース提供元:@Press
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