プレスリリース

リチウムイオン電池の大幅なコストダウンに期待!GSアライアンスが、リサイクル材料であるブラックマスを用いたリチウムイオン電池を開発

2023年08月23日(水)10時30分
GSアライアンス株式会社(代表取締役:森 良平、所在地:兵庫県川西市)は、リチウムイオン電池から取り出されるブラックマスと呼ばれるリサイクル材料を用いたリチウムイオン電池を開発しました。一度、コバルトやニッケルなどの金属を抽出して電池を再生する現行の方法ではなく、直接、独自の加工手法により作成した正極を用いたリチウムイオン電池を作りました。携帯電話、スマホ、タブレット、電気自動車などの、世の中のあらゆる電子機器に使用されているリチウムイオン電池の、大幅なコストダウンが期待されます。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/366029/LL_img_366029_1.jpg
リサイクル材料である、ブラックマスから直接作った正極を用いたリチウムイオン電池

■ポイント
1. ブラックマスとは、リチウムイオン電池から取り出されるリサイクル材料で、見かけは黒い粉体であり、コバルト・ニッケル・マンガン・リチウムなどのレアメタルを含んでいます。

2. リチウムイオン電池に必要なコバルト、ニッケルなどのレアメタルの産出はロシア、中国、アフリカなどの特定の地域に偏在しており、政治的供給不安や価格変動のリスクが常にあります。よって、リチウムイオン電池をリサイクルすることが理想です。

3. 現在では、ブラックマスから硫酸、塩酸などの危険な化学物質を用いてコバルト、ニッケルなどの金属を抽出して、再びリチウムイオン電池の正極とするなどの検討が行われていますが、この工程は作業員に対して危険で、機械設備、環境にも負担がかかります。

4. この金属抽出過程を経ることなく、ブラックマスから独自工程により直接正極を作成し、それを用いたリチウムイオン電池を開発しました。


■開発の社会的背景
人口爆発による地球温暖化(沸騰化)、森林の消滅、砂漠化、生物種の絶滅、水汚染、プラスチック汚染などの環境破壊は深刻になってきています。地球温暖化の主な原因は、メタンやCO2などの温暖化ガスの急増といわれています。今後は太陽光発電や風力発電などの石油、石炭などの化石燃料に依存しない、再生可能エネルギーを利用することが理想です。しかしながら太陽光発電や風力発電は曇り、雨や夜の時間、風が吹かない時間などは発電しないわけであり、電気供給が不安定です。よって、電気をためることができる蓄電が非常に重要になります。蓄電池(二次電池)を社会に普及させれば、持続可能な開発成長を目標とする(SDGs)社会のための、クリーンな再生可能エネルギーに依存する世の中の構築も可能になってきます。

それであれば蓄電池を世の中に大量に普及させれば良いわけですが、代表的な蓄電池である現行のリチウムイオン電池は価格が高く、また原料であるコバルト・ニッケル・マンガン・リチウムなどのレアメタルの産出はロシア、中国、アフリカ、南米などの特定の地域に偏在しており、供給不安や価格変動のリスクが常にあります。例えばコバルトにおいては、コンゴ民主共和国が世界の産出量の約半分を産出していますが、政治的不安定性から生じる供給不安や、児童労働搾取、コバルト鉱石の大量掘削作業による水質汚染、土壌汚染などが課題となっています。

よって、リチウムイオン電池をリサイクルして再生する試みが世界中の大学、研究機関、企業で検討され始めています。欧州連合(EU)においては、蓄電池のリサイクルを域内で義務づける規制を導入し、主要材料のリチウムは使用済み電池から2027年までに50%、31年までに80%を再資源化される計画です。


■研究の内容
現在検討が進められているリチウムイオン電池のリサイクルの主な方法においては、まず、使用済みのリチウムイオン電池を回収、分解、粉砕して、主なベースメタル(埋蔵量、産出量が多く、比較的精錬、回収が簡単な金属)や、その他の不純物などを取り除きます。このような工程を経た後に、見かけは黒い粉体である"ブラックマス"と呼ばれる物質を取り出してきます。このブラックマスには、リチウムイオン電池を構成していたプラスチック・樹脂・電解液・バインダー・アルミニウム・銅・鉄・スチール・グラファイトなどが含まれています。一方で、上述したコバルト・ニッケル・マンガン・リチウムなどの貴重な金属も大量に含有されています。
よって、これらの貴重な金属を抽出して、新しいリチウムイオン電池の再生に使用します。しかしながら、これらの金属を抽出する工程において、硫酸や塩酸などの毒性の高い化学物質が使用されており、工場、機械、また作業員、総じて環境に対しての負荷が高く、毒性も懸念されています。

このような状況の中、GSアライアンスの森良平博士(工学)は、硫酸などを用いる金属抽出の工程を経ることなく、ブラックマスから直接、新しい正極材料を作り直し、そのような正極を用いたリチウムイオン電池を開発しました。開発したリチウムイオン電池は、市販のNMC111(LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2)と呼ばれる正極材料を用いたリチウムイオン電池と比較して、約85%の初期的電池容量を示しました。またサイクル安定性も、市販のNMC111に匹敵する良好な結果でした。

このようにして作るリチウムイオン電池は、金属抽出工程を省くことができ、環境への負荷も下がり、また、ブラックマス自体の価格もリサイクル材料であり安くなるので、リチウムイオン電池の価格構成を大きく占める正極材料としての価格も、汎用の半分以下の価格になりえます。

今後は、電池容量、サイクル安定性のさらなる向上、そして、これらのブラックマスを用いたリチウムイオン電池関連製品を、国内外の顧客へサンプル供給し、事業化を目指します。


■会社概要
商号 : GSアライアンス株式会社(冨士色素株式会社グループ)
代表者 : 代表取締役 森 良平 博士(工学)
本社所在地: 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容 : 脱炭素、カーボンニュートラルの課題に取り組む環境、
エネルギー分野の最先端技術の研究開発
(国連のスタートアップ企業支援プログラムUNOPS GIC KOBEに
2020年に採択)
URL : https://www.gsalliance.co.jp/


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政府が規制強化、AI半導体輸出に数量制限 同盟国

ワールド

ガザ停戦合意「最終案」、イスラエルとハマスに提示 

ビジネス

中国が世界造船業界を不当に支配、米政権が調査報告発

ビジネス

中国が通貨防衛強化、元安けん制 香港外準増や海外借
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 6
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 7
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 8
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 9
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中