Picture Power

【写真特集】静かに朽ちゆく出羽島で生きる

Tebajima

Photographs by Hajime Kimura

2024年07月25日(木)16時54分

会長さん.jpg

⽥中幸寿 出羽島の部落会長を40年以上務める集落の長で、牟岐町漁業組合の組合長。島に初めて水道と電気が通った時の感動は忘れられない。人口減少の始まりは昭和40年前後と回想する。田中の世代が分家をする時に、狭い島には土地が足りず、人が流出した。再興のためのイベントや移住促進も行った。移住者を詮索しないよう努めてはいるが、小さな集落では「言いたくないことも言わないかんことがある」。漁業も努力だけでは立ち行かず、観光業も簡単ではない

らすに.jpg

(右)マグロ漁師をしていた頃の坂本栄三の姿。娘の留美子は出羽島育ちで、実家の重伝建指定を機に、22年に島に戻った 
(左)島民が荷物の運搬手段として使う「ネコ車」。島が小さく車が通る道路がないため自動車やバイクはない

ジョージさん.jpg

仲⼭丈⼆ 島に一時的に住んでいる大学生。出羽島からオンラインで大学の授業を受けている。インドネシアのバリ島生まれ。父が夏を過ごすための家を出羽島に購入し、子供の頃は定期的にここを訪れていた。 以前は朝4時頃になると多くの船が一斉にエンジンをかけて出航し、目覚まし時計代わりだった。2018年頃、12年ぶりに島に来た時には、様変わりしてとても静かになっていた。 漁が仕事だというのは理解しているが、楽しんでいるように見え、漁師に憧れる

もとこさん.jpg

原⽥素⼦ 出羽生まれの出羽育ちで、自らを「出羽の生え抜き」と呼ぶ。出羽漁協・夫人部の会長をしていた。中学校までは出羽島で過ごし、島外の高校で洋裁を習った。水道の開通前は、住民が井戸までバケツで水をくみに行き、運ぶうちに水量は半分になったという。 島のテングサの品質は高く、値段が高かったので、よく採集していたが、3年ほど前から全く採れなくなり、他の海藻も生えないのでアワビなども姿を消した。健康維持のための散歩が日課

新潟さん.jpg

新潟 潔  高校卒業後、神戸の銀行に勤めたが、当時漁師をしていた父親の体調が悪くなり、手伝いのために島に戻った。その後は漁業組合に勤めた。島の維持には、若い人に来てもらって力を借りないと、地域の活動ができないと言う。力仕事も困難。ここでは、72歳の自分が10番目くらいに若い。自宅が重伝建指定を受け、建物の修繕費の9割を国や自治体が負担するが、それは外観だけで内部は自腹。子供が住むなら修繕の価値はあるが、そうではないので難しい

最後.jpg

(右)島には空き家が目立つ。朽ちた住居の撤去にも費用がかかるため、大部分はそのままになっている (左)船着き場と神社の間にある松。神事の際にはこの木の周辺に大漁旗が飾られる


写真:木村肇
写真家。1982年千葉県生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科卒業。人間の記憶、歴史の痕跡を主なテーマにした作品を制作し、国内外の主要メディアやギャラリー などで発表。近著に『Correspondence』(仏the (M) éditions、22年)、「嘘の家族」(Three Books、24年)など

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story