コラム

安心ばかりを求める社会は滅亡する

2020年03月13日(金)15時15分

つまり、安心を求め続けた社会は、思考停止社会となり、鈍感社会となり、世の中、世界、あるいは宇宙に起きるリスクに対する感度がなくなり、対応策も準備せず、いざそのリスクが実現したときには、破滅する可能性が高まるのだ。

現在の新型コロナウイルスの危機は、確かに危機だ。しかし、絶望的な危機でもなく、頻繁に起こる、歴史的には普通の、定型的な危機だ。この定型的な普通の危機に対し、全世界で、社会的にパニックになっているようでは、本当に予期せぬ危機が来たときに、我々の社会は滅亡してしまうだろう。

コロナウイルス危機以外の危機は、今、この瞬間にも世界に溢れている。紛争の危機、貧困の危機、虐待の危機、あらゆる危機、しかも本質的で解決にエネルギーと知恵とカネのいる危機をおっぽり出して、目先のささいな危機に、パニックから逃避し、安心を得るためだけに世界中のエネルギーを集中するのはどうかしている。

だから、我々の社会は滅亡の危機にあると私は考えるのである。

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プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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