最新記事
シリーズ日本再発見

日本から喫煙できる飲食店がなくなる――かもしれない?

2017年01月27日(金)17時03分
高野智宏

evilclown-iStock.

<今国会に提出される見込みの受動喫煙防止対策強化法案。もし成立したら、日本の飲食店を取り巻く環境は大きく変わりそうだ>

【シリーズ】日本の観光がこれで変わる?

 受動喫煙防止対策のさらなる強化を、厚生労働省が推し進めている。昨年10月には、厚労省のワーキンググループが「受動喫煙防止対策の強化について」とするたたき台を作成。法案は今通常国会に提出される見込みだ。

 たたき台に示された基本的な方向性は、イギリスの建物内全面禁煙をベースに、喫煙室の設置を認める韓国の制度を融合した「イギリスと韓国の混合型」制度を検討するというもの。また、勧告・命令を受けてなお違反した施設管理者や利用者(喫煙者)には、詳細は検討中ながら罰則が適用されることも明記されている。

 この方向性のまま法案が成立すれば、日本のすべての飲食店が「全面禁煙」か「喫煙室内でのみ喫煙可」のどちらかになる。もしそうなれば――賛成・反対どちらの立場にせよ――日本人にとっても、日本を訪れる外国人にとっても影響は大きいだろう。

 厚労省はたたき台作成と同時に、今回の対策強化案に対する公開ヒアリングを10月、11月の2回にわたり実施した。各業界団体をはじめ、消費者団体や労働組合、商工会議所など計21団体が意見を述べたが、なかでも注目されたのが飲食店からの「このままでは潰れる!」という声だった。

 各種飲食店が加盟する日本フードサービス協会の代表者は、「居酒屋では喫煙できないと約20%の売上減となるデータもあり、原則建物内禁煙となると客離れによる売上不振が予想される。結果、従業員の給与削減や、中小の店舗では最悪、閉店を余儀なくされるかもしれない」と発言。「喫煙室の設置は、物理的に困難な場合や賃貸契約で不可能な場合もある」などと、一律の規制強化に難色を示した。

 年が明けてからも、危機感を訴える声はやんでいない。1月12日、飲食業界5団体が東京都内で緊急集会を開き、厚労省の対策強化案に対して「中小零細の飲食店は規制への対応が難しい」と主張。日本経済新聞によれば、100人以上の業界関係者が集まったという。

【参考記事】「カジノ法案」で日本への観光客は本当に増えるのか

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

南ア、白人を人種差別と主張する米政権の圧力に屈せず

ワールド

台湾行政院長、高市氏に謝意 発言に「心動かされた」

ワールド

ロイターネクスト:シリア経済、難民帰還で世銀予測上

ワールド

アングル:日銀利上げ容認へ傾いた政権、背景に高市首
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中