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GOLDWIN、THE NORTH FACEなどを展開するゴールドウインが、創業の地・富山で始動するプロジェクトの正体

2023年01月31日(火)18時00分
文:高瀬由紀子 写真:榊 水麗

<スポーツアパレルメーカーのゴールドウインが「PLAY EARTH」を掲げ、人と自然とのつながりを深める場所づくりへの取り組みを始めている。渡辺社長が「10年規模の取り組みになる」と語る複合施設プロジェクトの全貌とは?>

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最初の施設となる「NATURING GARDEN」のイメージ。四季折々の自然が楽しめるこの公園を軸に、キャンプサイトやジムなどのさまざまな施設を順次オープンしていく予定

未来の子どもたちに向けた、自然とつながる理想の場所づくり

穏やかな水面が木々の緑を映し出す美しい湖。周囲には遊歩道があり、桜や菖蒲、紅葉など、四季折々の風景を愛でながらの散策が楽しめる。豊かな自然に恵まれた桜ヶ池は、富山県南砺市の里山にある、県民の憩いの場所だ。

この地で2026年の開業を目指して始動したのが、「PLAY EARTH PARK NATURING FOREST」。オリジナルブランドを始め、THE NORTH FACEやHELLY HANSENなど数多くのブランドを展開しているスポーツアパレルメーカー、ゴールドウインが推進するプロジェクトだ。

時代とともに多様なスポーツマーケットの創造を担ってきた同社が、創業70周年を迎えた2020年に掲げたのが「PLAY EARTH」というコンセプト。スポーツの起源は、地球の自然の中での遊びから始まったといわれる。その進化の過程で築いてきた人と自然との関係性を大切にし、未来の子どもたちに向けて、人と自然がつながり想像力を刺激し合える場所づくりを行っていきたいという思いが込められている。

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スキー・登山・水泳を始め多様な分野でブランドを展開し、最新技術を用いた製品開発を行うゴールドウイン。社内には同社のものづくりの歴史を総括したアーカイブ展示も

この構想を具現化するにあたって選ばれたのが、同社の創業の地である富山県。標高3000mの立山連峰から水深1200mの富山湾までの地形は変化に富み、日本有数の生物多様性を誇る。2023年1月18日には、南砺市の桜ヶ池周辺エリアが最初の拠点に決定したことを告知するプレス発表会が開催され、富山県知事と南砺市長も登壇した。

新田八郎知事からは「官民連携のリーディングプロジェクトとして、関係人口も拡大させつつ、皆で富山県の未来をつくっていきたい」、南砺市の田中幹夫市長からは「市で10年来にわたって取り組んできた"エコビレッジ構想"は、自然と共生しつつ次世代に命をつないでいくことを目指しており、今回のプロジェクトと方向性が同じ」というエールが寄せられた。

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左から:ゴールドウイン代表取締役社長・渡辺貴生氏、ゴールドウイン代表取締役会長・西田明男氏、富山県・新田八朗知事、南砺市・田中幹夫市長

「NATURING」に込めた、本来の意味での「人と自然との共生」

もともと南砺市には、「土徳(どとく)」と呼ばれる昔ながらの精神風土が根付いている。民芸運動の創始者である柳宗悦が、自然とともに人がつくりあげてきたこの土地の品格を表現した言葉といわれており、あらゆるものに感謝して生きていく浄土真宗の「他力本願」の教えともリンクしている。

今回のプロジェクトの施設名「PLAY EARTH PARK NATURING FOREST」の「NATURING」にも、人と自然が作用し合って、よりよい環境をつくっていくという意図を込めたと渡辺社長は語る。

「本来の自然の営みは、利他的な循環にあると思います。しかし、地球上の生物の重量の中でわずか0.01%に過ぎない人間が、もっとも負荷の高い存在になってしまっている。ですから、地球上の営みのサイクルの中に、私たち人間の生活をうまく組み込めるよう、デザインし直すことが必要ではないでしょうか。そうした、本来の意味での自然との共生を実現するために、自然と遊びながら学ぶ場所にしていきたいのです」

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