最新記事
シリーズ日本再発見

大阪でも受動喫煙防止条例、注目すべき点は?

2022年04月04日(月)11時00分
高野智宏
大阪市の松井一郎市長

「受動喫煙をやめるのが世界の潮流」と大阪市内全域を路上喫煙禁止にする方針を打ち出した松井市長 Issei Kato-REUTERS

<受動喫煙防止は「世界の潮流」。大阪・関西万博の開催を控えた大阪で、東京と同様の厳しい受動喫煙防止条例がこの4月から一部施行される。ただ、気になる点もある>

3月2日、大阪市の松井一郎市長は市内全域を路上喫煙禁止地区とする方針を明言。2025年4月から開催される大阪・関西万博を見据えたもので、施行時期は明らかにしなかったが「受動喫煙をやめるのが世界の潮流。世界中から認められる都市を目指していきたい」と語った。

確かに、受動喫煙防止は「世界の潮流」。ただ、路上をはじめ屋外での喫煙には比較的寛容な世界に対し、日本は厳しい対策を講じてきたという違いがある。東京都千代田区で2002年、たばこのポイ捨て防止等の環境美化を目的とした初の罰則付き条例(千代田区生活環境条例)が制定され、路上喫煙禁止の流れは全国へと拡大していった。

それに加え、2020年4月には自治体単位ではなく国の法律として、望まない受動喫煙の防止を掲げた改正健康増進法が全面施行。これにより日本における受動喫煙防止の流れは加速し、屋内の喫煙対策が厳格化された。学校や病院だけでなく、飲食店も条件付きで原則禁煙となった。

東京都では東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、改正健康増進法に「従業員がいる店は原則禁煙」という条件を"上乗せ"した、国より厳しい受動喫煙防止条例を施行(2020年4月から)。都内では現在もこの条例が適用されている。

大阪府でも東京都と同様、大阪・関西万博を契機とした"上乗せ"強化策を講じている。これは松井市長による大阪市の「路上禁煙」方針とは別の動きだ。大阪府受動喫煙防止条例は2019年3月に制定され、以降、段階的に施行されてきた。この4月1日からは――これまた東京都と同様――従業員を雇用する飲食店が原則屋内禁煙(努力義務)となる。全面施行(罰則あり)は2025年4月の予定だ。

条例の影響が最も危惧されているのはやはり、3月21日に新型コロナウイルスの蔓延防止措置が明けたばかりの居酒屋やカラオケ店、スナックやバーといった飲食店だろう。

昨年夏に業界団体が実施した、原則禁煙の対象となる府内飲食店(従業員のいる店、もしくは客席面積30~100平方メートルで喫煙可能な店)の調査では、8割が条例を「厳しい」と評価した。大阪府による昨年10月の「受動喫煙防止対策における飲食店の実態調査」でも、原則屋内禁煙に取り組むうえでの課題を問うた設問で、最も多い回答は「経営面での不安」だった(54.3%)。

しかし、実は2019年に条例が制定された際、「府民や事業者等の権利を制限する」ことから、以下の附帯決議が府議会で承認されていたことも忘れてはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中