最新記事
シリーズ日本再発見

シルク・ドゥ・ソレイユで大役つかんだ日本人「全てにおいて妥協がない」

2018年03月31日(土)11時55分
大橋 希(本誌記者)

『ダイハツ キュリオス』の公開リハーサル

<大学時代に渡米し、厳しいオーディションを経て『ダイハツ キュリオス』に出演中の池田一葉が語る舞台の見どころ>

カナダの独創的なサーカス団シルク・ドゥ・ソレイユの公演『ダイハツ キュリオス』が東京で開幕中だ。産業革命時代に近未来を合わせたイメージの舞台で、主人公シーカーが実験室内で想像した世界が描かれる。

主人公に並ぶキャラクターの1人、クララを演じるのが日本人ダンサーの池田一葉だ。ダンスを学ぶため大学時代に渡米し、12年に入団オーディションに合格。公演に参加できるアーティストは全体の5%という中で、今回の役をつかんだ彼女に話を聞いた。

◇ ◇ ◇

――大学時代に渡米しているが。

高校時代にヒップホップダンスを始め、大学3年生のときに休学してロサンゼルスに行った。親とは1年間という約束をしていたが、ダンスの勉強をもっと続けたくなったので日米を行ったり来たりして卒業し、そのままロスに住んでいる。

シルク・ドゥ・ソレイユの公演は、05年にラスベガスを旅行したときに「O(オー)」を見たのが最初。すごく感動したが、自分はアクロバットはやらないので、そのときは入りたいとは考えなかった。でもその後、友達の姉がダンサーとして所属していることを耳にし、同じ時期にシルク・ドゥ・ソレイユの『マイケル・ジャクソン イモータル』というツアーのオーディションがあって。ダンサーを使うショーがあることを知り、「入りたい」とすごく思うようになった。

大学は早稲田の人間科学部で、スポーツ倫理やスポーツ心理学を学んだ。アスリート系ですね。私が思うに、ダンサーには芸術性の強い人とアスリート的な人の2種類がいる。私は目標達成のプロセスだったり、メンタルの構築だったりが、どちらかというとアスリートに近いと思う。

japan180331-2.jpg

日本人ダンサーの池田一葉がメインキャラクターの1人クララを演じる

――ほかの舞台作品などと比べて、シルク・ドゥ・ソレイユが特別な点は?

演目やテーマだけでなく、構成やメークや衣装、舞台装置まで、全てにおいて妥協がないところ。それが観客にも伝わっていると思う。

シルク・ドゥ・ソレイユはサーカスの枠から出た新しいことをして大きくなってきたカンパニー。でも演出のミシェル・ラプリーズも言っているように、『ダイハツ キュリオス』はあえてローテクにこだわり、サーカスを現代風につくり変えているところがほかの作品と違う。

ストーリーが何層にも作られているので、初めて見ても、何回見てもそれぞれ発見があることも魅力。疲れたり落ち込んだりしたときに見てもらえば、すごく幸せになれるショーだと思う。

――ほかの出演者の危険なアクロバットは、安心して見ていられるもの?

普段の練習風景などを見ているので、彼らが一流のパフォーマーであることはよく分かっている。観客として初めて公演を見たときはドキドキしたが、一緒にやっていくうちに、「この人たちは大丈夫なんだ。危険なことはない」と思うようになった。

――クララの表現で気を付けているところは。

クララは感情の変化が大切な役なので、少しずつそれを出せるようにするにはどうしたらいいか、日々考えている。ここまで細かい演技をするのは初めてなので、「疲れたな」と思ったときはすぐに鏡でどんな顔をしているのか確認したり、「うれしい」と思ったときはどんな行動を取っているのか注意したりと、自分や他人を細かく観察するようになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中