最新記事
シリーズ日本再発見

日本「民泊」新時代の幕開け、でも儲かるのは中国企業だけ?

2017年06月09日(金)18時08分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

zorazhuang-iStock.

<先日話題になった「消えた外国人観光客」。訪日観光客は増加が続いているが、日本の観光産業発展に直結しているとはいいがたい。今国会で民泊新法が成立し、民泊業界がさらに拡大することが見込まれているが......>

訪日外国人観光客の増加が続いている。2016年は2400万人を突破。今年1~4月は911万6000人と前年同期比16.4%増を記録した(日本政府観光局、2017年5月19日発表)。

しかし、昨年話題となったのは、中国人観光客の「爆買い」終了だった。「爆買い」はもともとは"1人当たり買い物額20万円台後半"という旺盛な消費欲を意味する言葉だ。2015年秋に新語・流行語大賞に選ばれたが、実際には1人当たり買い物額は同年冬がピークだった。

【参考記事】流行語大賞から1年、中国人は減っていないが「爆買い」は終了

そして今、話題となっているのが宿泊客数の伸び悩みだ。朝日新聞は5月24日に「ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み」を掲載し、訪日外国人客数は今年1~3月の累計で前年同期比約14%増(653万人)となった一方で、外国人延べ宿泊客数は約2%増(延べ1803万人)にとどまったことを報じている。

民泊、クルーズ船、ネットカフェ、夜行バスなど宿泊形態の多様化が要因との分析だ。日本政府観光庁は来年1月にも宿泊旅行統計調査の手法を改訂し、民泊やラブホテルも統計対象に加えることを検討している。

2016年3月、安倍政権は「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、「2020年に2000万人、2030年に3000万人」という目標を、「2020年に4000万人、30年に6000万人」と一気に倍増させた。きわめて野心的な目標だが、今の勢いが続けばあながち達成不可能ではないようにも見える。

しかし上述のように、さまざまな「異変」が起きているのも事実。訪日外国人観光客の増加がそのまま観光産業規模の増加に直結しているとはいえず、関連省庁、関連業界は対応を迫られている。

中国系民泊プラットフォームが続々と日本進出

さて、外国人宿泊客はどこへ消えたのか? 例えば中国人は今年3月、前年同月比2.2%増の50万9000人、述べ宿泊日数は13.4%減の118万泊となった。訪日客数は増加しているのに宿泊客数は大きく減少。中国人宿泊客が一部「消失」したことを示している。彼らはどこに消えたのか。

現在の統計調査手法に問題があり、統計が現状を反映していない中、具体的な要因を探ることは困難だが、民泊の影響は大きそうだ。

6月8日、AirBnBと中国旅游研究院が中国で合同発表した「シェアハウス消費トレンド報告2017」によると、中国人の国外旅行で民泊利用は今や主流となっている。ツアー旅行から個人旅行へというトレンド転換が続いているが、個人旅行客の多くは予約が簡単で、コスト的にも安い民泊を選ぶ傾向が強い。中国人によるAirBnB利用で最多の国は日本。2位の台湾、3位の米国を上回った。

【参考記事】東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃなかった

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地

ビジネス

米国株から資金流出、過去2週間は22年末以来最大=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中