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シリーズ日本再発見

なぜ日本の街にはゴミ箱や灰皿が少ないのか

2017年03月24日(金)16時13分
高野智宏

そして、企業の努力も見逃せない。たばこ販売の最大手であるJTは、長年にわたりテレビCMや交通広告などでマナー啓発広告を展開してきた。時に歩きタバコの危険性を訴え、時にはクスッと笑えるもので注意を引くなど、多彩な広告展開で喫煙者のマナー向上を呼びかけている。

いずれにせよ、日本人のマナーの良さが外国人から高く評価されていることは間違いない。日本では今、国会への提出が見込まれている受動喫煙防止対策強化法案についての議論が続いているが、喫煙マナーに限っても、国を問わず在日・訪日外国人から好意的な評価を得ている。

JTBグローバル・マーケティング&トラベルが行った「外国人観光客の日本に対する喫煙環境意識調査」では、「自国と比べて、日本の喫煙環境をどう感じたか」という設問に対し、全体の64%が「日本の方が良い」と回答している。

個人の意見を尋ねてみても、「日本の喫煙マナーは私の母国よりも良いと思う」(エリック・コジンスキーさん/アメリカ)、「路上の喫煙マナーは日本の方が良い。イタリアは路上のどこでも喫煙しているから」(ダニエレ・ラウロさん/イタリア)、「私の国では喫煙マナーを守らない人が多い。日本人の方がマナーを守っていると思う」(ブラオ・パンさん/タイ)など、その大半は「日本人の喫煙マナーは良い」という意見だった。

もちろん、屋内を禁煙とする国が多いだけに、「マナーは良いが、きちんと分煙できていないレストランも多い」(コンスタンチン・レコンツェフさん/ロシア)や「ヨーロッパのように店内は完全禁煙という店が増えて欲しい」(マリア・ドイチュさん/ドイツ)と、日本でも欧米型の屋内完全禁煙を希望する声があることも触れておくべきだろう。

日本の受動喫煙対策の分煙条件

前述のコメントにもあるとおり、屋内は完全禁煙がスタンダードな欧米諸国に対し、日本では居酒屋をはじめ、レストランやカフェでも喫煙が認められている。そうした喫煙環境及び受動喫煙対策に対し、世界保健機構(WHO)からは「世界最低」レベルにあるとの烙印を押されてしまっている。

しかし、本当に日本の受動喫煙対策は世界最低レベルなのだろうか。飲食店で喫煙ができるといっても、多くの店舗ではエリア分けや喫煙室を設けた「分煙」化を実施しているし、"喫煙マナーの良い日本人"だけに、完全禁煙店舗や禁煙エリアで無理やりたばこを吸う人はほとんどいない。

専門的な話になるが、ここで分煙という規定を詳細に確認しておきたい。厚生労働省が2002年に作成した報告書では「新しい分煙効果判定の基準」として、排気装置による有効な分煙条件を以下のように定めている。

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