コラム

結局、TACOだったトランプ米大統領...関税交渉で最悪の事態回避も、日本経済の厳しい夏は続く

2025年08月02日(土)11時05分

トランプ政権が世界経済のリスクであることは変わらない

いずれしても、自動車への25%関税賦課は避けられないと筆者は予想していたが、トランプがTACOであり続けることを想定して上昇していた米株式市場が正しかった、ということである。

ただ、日本や欧州が米国とのディールに至ったわけだが、もちろん手放しで褒められるものではない。一方的に米国から15%の高関税を課されること自体が不合理で、自動車など輸出産業がダメージを受けるし、その上で公的資金による米国への融資を強いられるのが実情である。

25%の関税賦課という厳しい事態は回避されたが、米国第一主義を掲げる横暴なトランプ政権が世界経済のリスクであることは変わらない。

日本経済に目を転じると、2024年央から個人消費にブレーキがかかり低成長が続いている上、為替市場で2024年までの超円安が転換して、対米輸出の高関税賦課に直面する輸出企業の環境は厳しくなる一方である。

日本経済を一段と成長させるには、個人消費を刺激する財政金融政策が必要になっている。7月20日の参議院選挙での自民党の大敗は、小規模の給付金支給という政策を打ち出した、経済官僚に依存する石破政権への不信感が最大の要因だった。

インフレ率が高まる中で「行き過ぎた徴税」が続いているのだから、家計に対して恒久的な減税を行う必要があると筆者は考えている(7月22日コラム「続投宣言の石破首相は理解できない、有権者が『現金給付』に嫌悪感を抱く理由」参照)。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

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