コラム

日本軍の捕虜虐待を描きながら「反日映画」にされなかった『太陽の帝国』の不思議

2025年09月06日(土)18時50分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<外国人監督が作った、日本の戦後史観に触れるような映画は「反日」とされて上映中止運動が起きたりする。でもなぜかスピルバーグの『太陽の帝国』は問題視されなかった>

戦後80年となる今年、中国で3つの映画が話題になっている。7月25日に公開されて大きなヒットとなっている『南京写真館』は南京事件(南京大虐殺)を背景に、写真スタジオに避難した市民たちが命懸けで日本軍の暴行を記録しようとするドラマだ。

8月8日に公開された『東極島』は、第2次大戦中に浙江省沖海域で沈没した日本船に乗っていたイギリス人捕虜を中国の漁民が救出する実話を映画化している。


これから公開予定の『731』は、日本軍731部隊が中国東北地域で行った細菌兵器の研究や中国人捕虜らへの人体実験などを告発した映画だ。

僕はまだ1本も見ていない。日本公開は難しいのだろうか。これから見られるかどうかも分からない。

なぜ日本で公開されないのか。そう質問すれば、反日映画だからとの答えが返ってくるだろう。では反日映画とは何か。日本の過去や現在を批判する映画。だから不思議になる。ナチスやホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の映画は世界中で量産されているが、これを反独映画とは誰も言わない。

先住民虐殺や黒人差別、ベトナム戦争やイラク戦争など自国の歴史を批判するハリウッド映画も少なくないが、反米映画との呼称も聞いたことがない。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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