和歌山県太地町のイルカ漁を告発した映画『ザ・コーヴ』は反日なのか?
抗議を恐れて日本公開が頓挫しかけた『オッペンハイマー』をこのリストに入れることも可能だが、(説明するまでもなく)監督が日本人ではないことが反日映画の条件なのだ。だから歪(いびつ)なナショナリズムが励起(れいき)する。僕は取りあえず日本国籍を持っているから、(抗議する人たちの)標的になりづらい。
とここまでを書きながら、抗議する人たちの底の浅さに改めて嘆息する。せめて観てから言えよと本音では思うけれど、私は観たくもないし誰にも観てほしくない、との主張をぎりぎり認めるとしても、その「観たくない」基準の(無意識の)前提が「監督が日本人ではない」ならば、それはあまりに浅慮すぎる。
今回取り上げる『ザ・コーヴ』は、和歌山県太地町のイルカ漁を告発するドキュメンタリーだ。2010年の公開当時、抗議を受けて多くの劇場が上映を中止し社会問題となった。
この映画を批判するときに「プロパガンダ映画」という言葉を使う人は多いが、映画も含めて表現の本質は全てプロパガンダだ。その主張の正しさや表現については議論されるべきだが、プロパガンダであることは映画の価値とは関係ない。






