ホームレス女性殺害事件がモチーフの『夜明けまでバス停で』 直近の現実を映画で描く葛藤

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<20年11月に東京・渋谷のバス停でホームレス女性が殺害されて2年。設定は大きく変えているが、この凄惨な事件を高橋伴明監督はどう作品にしたのか>
時おり考える。映画は現実にどれほど拮抗できるのか。すべきなのか。「できるのか」と「すべきなのか」。二つの述語を記したけれど、どちらも微妙に違う。適格な述語をどうしても思い付けない。でもとにかく、映画を撮る上で現実をモチーフにすることについて、改めて考えてみたいのだ。
これは映画だけではなく、表現領域全般におけるテーマと捉えるべきだろう。現実に起きた事件や事象を客観的に取材して問題提起するならば、それはジャーナリズムの領域になる。テレビ時代に僕は、ドキュメンタリーと報道系の番組を主なフィールドにしていた。当時はほとんど意識していなかったが、この二つは似て非なるものだ。100%の客観性や中立性を実現することなどそもそも不可能だが、ジャーナリズムならば可能な限り客観や中立を目指さなくてはならないし、ドキュメンタリーは主観(作家性)をしっかりと示さねばならない。
......この論考を始めると一冊の本になる。今は映画に絞ろう。現実に起きた事件や事故をモチーフにする映画は多い。いやそもそも、現実とまったく切り離された作品を制作することなど不可能だ。時代劇だろうがホラーやファンタジーだろうが、脚本家や監督の日常や現実の影響から100%切り離された映画などあり得ない。
それを前提で書くが、欧米や韓国などに比べれば、この国では直近の事件をテーマにする映画は決して多くない。その理由の一つは、加害者を描くことに抑制が働くからだろう。
ただし例外はある。安倍晋三元首相銃撃事件をモチーフにした『REVOLUTION+1』だ。国葬の日に特別上映されたこの映画については、いつか書くつもりだ。
連合赤軍事件をモチーフにした映画『光の雨』を2001年に発表した高橋伴明が今月公開する新作は『夜明けまでバス停で』。20年11月に東京のバス停でホームレス女性が殺害された事件にインスパイアされた映画であることは明らかだ。
事件から2年しか過ぎていない。この迅速さは評価されるべきだ。だが、映画は設定を大きく変えている。
コロナ禍で住まいと職を失いホームレスになった三知子は、バス停の小さなベンチで夜を明かす日々を送っている。かつて働いていた焼き鳥屋の同僚や女性店長、新たに知り合ったホームレスの男や女たちなどと接点を保ちながら、バス停近くに暮らす中年男の殺意に三知子はまったく気付かない。
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