コラム

情報機関が異例の口出し、閉塞感つのる中国経済

2024年02月13日(火)17時17分

大幅な公共投資の拡大や金利の引き下げが難しいとなると、需要刺激策として考えられるのが減税である。ただ、中国の場合、個人所得税はもっぱら高額所得者が支払っているので、減税しても中低所得者の実入りは増えず、高額所得者ばかりを優遇することになる。一方、付加価値税(増値税)を引き下げても、一般の国民にとっては間接税であるため、効果を実感しにくい。

中低所得者に確実に所得の増加をもたらしうる手段は現金の直接給付しかないように思われる。中国では2010年代以降、電気自動車(EV)の購入に対する補助金が広く配られてきたが、これは車を買え、かつ自宅に充電設備を設置できるような階層しか恩恵に浴することができない。コロナ禍に際して、日本では国民に一律1人10万円配られたが、中国ではごく少額の買い物券が希望者に配られたにすぎなかった。中国ではこれまで国民に一律に現金を給付するような政策は想定の範囲外だった。

ただ、折しも中国では少子化がすごい勢いで進んでいる。出生数は2017年以降急減し続けており、2023年は902万人と、2016年の半分以下になってしまった。いわゆる一人っ子政策は2015年に完全に撤廃され、2021年には子どもは3人まで可とされたが、合計特殊出生率は2017年の1.58から2021年は1.12、2022年は1.05とむしろ急落している。2023年は1.0程度であったとみられる。つまり、一人っ子政策が完全撤廃されてすでに8年経つが現実にはむしろ出生率が低下し、女性1人につき子ども1人の状態になっているのである。

こうした状況下で、一定の所得水準以下の中低所得層に対して子ども1人につき一定額の子ども手当を支給すれば、少子化傾向を逆転させることが期待できるばかりか、かなり確実に消費需要の増加につながり、一石二鳥の効果が期待できるように思う。

中国学.comより転載

参考文献:

清水克彦「5人に1人が就職できず、失業手当で食いつなぐ...中国の若者が「共産党を倒せ」と叫び始めた切実な事情」『プレジデントOnline』2022年12月7日

国家統計局「関于完善分年齢組調査失業率有関状況的説明」、2024年1月17日


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プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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