コラム

シャープ買収で電子立国ニッポンは終わるのか

2016年04月01日(金)17時30分

 要するに日本の電機メーカーが衰退した原因は、2000年代半ばに世界経済の趨勢を見誤り、中国など新興国の市場に力を入れず、むしろ日本国内に力を入れたからだ、というのが私の説です。パナソニックはようやく最近になって中国での売上比率が13%、その他アジアが13%まで上昇してきましたが、それでも全体の73%が日米欧です。

 外国企業を見ますと、例えばアップルは高級品のイメージがありますが、2015年の売上の24%は中国で、日本は7%でした(2015年)。日米欧での売上は全体の68%で、パナソニックよりも新興国に重きを置いています。サムスン電子が新興国を重視してきたことはよく知られていますが、実際2014年の売上のうち16%が中国、20%がその他のアジアとアフリカでした。

 ちなみにシャープは2012年3月期までは日本国内での売り上げが全体の5割以上を占めて非常に高かったのですが、それ以降は日本での売り上げが急減する一方、2014年以降、中国での売り上げが増え、2015年3月期では中国41%、日本35%と逆転しています。これは経営危機のなかで中小型液晶パネルなどを中国で必死に売った結果だと思われます。経営危機に陥ってから慌てて中国シフトを図るのではなく、もっと前から戦略的に中国や新興国市場に取り組んでいればあるいは今日の危機はなかったのではないかと思います。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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