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『ウォーキング・デッド』が犯罪学や社会学の「素晴らしい教材」と言える理由
たった一人で始まった物語が、やがて仲間ができ、集団の物語になっていく。舞台も、野営地から村落へ、村落から都市へ、そして都市から都市同盟へと広がっていく。そのダイナミックな展開を見ていて、ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』を思い出した。
著者によると、私たちホモ・サピエンスが、ネアンデルタール人など、ほかの種族との生存競争に勝ち残ったのは、フィクション(作り話)を生み出し、それをみんなが信じたからだという。
つまり、私たちが他を圧倒できたのは、強力なチームワークのおかげであり、それを可能にしたのが、私たちに固有の集合的想像力(共通信念)というわけだ。フィクション(ルールやミッションなど)の共有は、『ウォーキング・デッド』でも、集団が生き残るための重要な要素になっている。
個人的には、長年調査を続けている「城壁都市」の芽生えが、ドラマの中に見て取れたのがうれしかった。海外に行くと、街の境界を一周する城壁が今も高くそびえているのに驚かされる。
かつて民族紛争が絶えず、地図が次々に塗り替えられていた海外では、異民族による奇襲侵略を防ぐためには、人々が一カ所に集まり、街全体を壁で囲むことが有効とされたのである。
しかし、こうした城壁都市づくりの経験は、日本では皆無である。四方の海が城壁の役割を演じ、しかも台風が侵入を一層困難にしていたからだ。実際、日本本土は建国以来一度も異民族に侵略されたことがない。それどころか、戦国時代でさえ、村人や町人は弁当持参で合戦を見物していたという。日本人がリスク・マネジメントに不得手なのは、こうしたラッキーな歴史に原因がありそうだ。
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