コラム

『ウォーキング・デッド』が犯罪学や社会学の「素晴らしい教材」と言える理由

2025年05月08日(木)14時30分

『ウォーキング・デッド』では、日本の城のように、周囲に堀を巡らすのではなく、高い壁を築くことで、ゾンビの侵入を防ごうとしている。極めて、非日本的な発想だ。『ウォーキング・デッド』へと受け継がれている「城壁都市のDNA」は、海外において、「犯罪機会論」の普及を強力に推し進めてきた。

しかし、残念ながら日本では、城壁都市の未経験が災いして、「犯罪機会論」の普及が阻害されている。防犯対策において、トイレや公園のゾーニングが中途半端なのも、施設のゾーン・ディフェンスが低調なのも、城壁都市の未経験が原因である。

たかがドラマ、されどドラマ。良質な作品には、犯罪学や社会学のエッセンスがちりばめられていることが、確かにある。「実践なき理論は無力であり、理論なき実践は暴力である」とは、自作の座右の銘だが、ドラマも、ここでいう「実践」の一つなのかもしれない。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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