コラム

鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない...子どもの発達は所得格差に相関するのか

2026年01月13日(火)16時00分

政府目標に達している地方自治体は152のうちわずか4つ

スクール・レディ格差は地方自治体によっても異なる。政府目標の75%以上の児童がスクール・レディに達している地方自治体は152のうちわずか4つ。53地方自治体が政府目標から5ポイント以内、25地方自治体が10ポイント以上、6地方自治体が45ポイント以上も離れていた。

貧しいイングランド北部はスクール・レディに達する子どもの割合が最も低い状態が続く。無償給食の対象となる児童との格差が小さかった10地方自治体のうち8つはロンドンにあり、最も格差がなかったのはハックニー(3%)だ。家庭へのサポートが効いているとみられる。


ネスタの「より公平なスタート」ミッション・マネージャー、リジー・イングラム氏は「10人に3人の子どもは必要な基礎スキルを身につけずに学校に入学している。地方自治体が意欲的かつ戦略的に取り組む必要がある。目標達成に向けて地方自治体と協力を続けていく」と語る。

座りっぱなしの遊びスタイル、テクノロジーを使った遊びの台頭

子どもたちの指の力が不足している理由の一つは「座りっぱなしの遊びスタイル、特にテクノロジーを使った遊びの台頭」との見方を現場教師はFT紙に語っている。低所得の家庭ではオモチャが不足し、ナイフやフォークも使われていないことも影響している。

情報公開を請求したFT紙によると、2023年度から24年度にかけ、49%の地方自治体が出生から10代後半までの健康、教育、福祉サービスを提供する「ファミリー・ハブ(家族拠点)」や主に5歳未満を対象にする「チルドレンズ・センター」の予算を削減していた。

トランプ米政権から攻撃されているロンドンのサディク・カーン市長は23年9月からロンドン市内のすべての公立小学校に通う児童を対象に家庭の収入に関わらず給食を無料化する「ユニバーサル・プライマリー・フリー・スクール・ミール」を導入した。

「カーン氏は世界中でも最悪の市長」というのは本当か

インフレで食品価格や光熱費が高騰。中所得世帯でも給食費の支払いが負担になり、昼食を抜いた子どもたちがお腹を空かせたまま授業を受けるケースが問題視された。全員が同じ給食を無料でとることで無償給食を受ける恥ずかしさや差別をなくす効果もあった。

豊かなロンドンは予算にまだ余裕がある。行政・学校・家庭が一体となった20年来の強力なネットワークが存在するハックニーは「経済的に困難な状況にある子どもでも、学校の支援によって他の子どもと同じ土俵で闘える」という注目すべき成功モデルと言えるだろう。

トランプ氏は「カーン氏は世界中でも最悪の市長の1人。ロンドンの犯罪がとんでもなく増えている。移民政策に関して彼は災厄だ」と攻撃している。しかしトランプ氏がいくら貿易戦争、移民・難民排斥を強化しても子どもの貧困は永久に解消されない。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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