コラム

「吐き気がした...」性被害から子供たちを守る、「セックスワーカー保護」で成果を上げる英国の試み

2025年05月08日(木)17時57分

英国では売春の犯罪化より保護に重点が置かれる。保護を約束してセックスワーカーと信頼関係を築けば、なかなか表に出てこない児童の性的搾取に関する情報を集められる。彼女たちは過去に何度も搾取や虐待を経験しており、兆候に気づいて重要な情報を提供してくれる。

ローズさんは「私の名はローズ。警察のセックス・リエゾン・オフィサー。今夜は皆さんの無事を確認するため巡回している。18歳未満の子どもを見かけたり、心配な方がいたりしないか」と声を掛ける。セックスワーカーに性犯罪者の写真を見せ、近づかないようアドバイスする。

「私が10代の頃にこの制度があれば良かった」

こうした日々の接触が子どもとセックスワーカー両方の保護につながる。「ナイトライト」は2020年末、若者や子どもたちが性的搾取の危険にさらされていることを受け設立された。当時、男たちがティーンエイジャーに酒や薬物を渡し車に乗せるところが目撃される事件が発生。

コロナ危機に対する行動制限で街が静まり返っていたため、普段なら気付かなかった被害が明るみに出た。ティーンエイジャーは繰り返し人身売買と性的搾取の被害にあっていたことが分かった。この事件をきっかけに「ナイトライト」の取り組みが始まった。

セックスワーカーの1人は「私が10代の頃にこの制度があれば良かったのに。もしかしたら今の私はここにいなかったかもしれない」と話している。「ナイトライト」は深刻な性的暴行や暴力を経験しているセックスワーカーの保護にも重点を置く。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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